診療支援
患者説明

再生不良性貧血に対する治療
山﨑宏人
(金沢大学附属病院輸血部・准教授)

1.現在の病状・病態

 血液中には赤血球,白血球,血小板の3種類の血液細胞(血球)が流れています.赤血球には全身に酸素を運ぶ働き,白血球には細菌やウイルスなどの病原体を攻撃する働き,血小板には出血を止める働きがあります.これらの血球はすべて,骨髄中の造血幹細胞がもとになって造られます.この造血幹細胞がなんらかの原因によって持続的に少なくなった結果,血液中の血球も少なくなってしまう疾患が「再生不良性貧血」です.病名には「貧血」とありますが,通常,赤血球のみならず白血球や血小板も減少します.3系統とも減少した状態を「汎血球減少」とよびます.

 造血幹細胞が減少する理由としては,「造血幹細胞自体の異常」と,白血球の一種である「T細胞(Tリンパ球)による造血幹細胞への免疫学的攻撃」が想定されています.

 主な症状は,赤血球減少に伴う「貧血」(労作時の息切れ・動悸・立ちくらみ・頭痛など),好中球減少が原因で発症する肺炎や敗血症などの感染症に伴う「発熱」,血小板減少に伴う「出血傾向」(皮下出血=例えばぶつけた覚えのないあざ・歯肉出血・鼻出血など)です.

2.治療目的

 骨髄の造血能を回復させ,減少している血球を増加させることを目指します.輸血は一時的に貧血や血小板減少を改善させますが,輸血だけで治癒に至ることはありません.

 3系統の血球数を正常化させることが最終目標ですが,輸血から離脱できれば,最初の治療目標は達成したといえます.一方,輸血が必要となる前の比較的早い段階に治療を開始することも大切です.

3.治療法の概略と効果

 再生不良性貧血の大部分は,T細胞による造血幹細胞への免疫学的攻撃が原因なので,このT細胞の働きを抑えることを目的とした免疫抑制療法が行われます.

1)免疫抑制療法

 抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(anti–human thymocyte immunoglobulin,rab

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