診療支援
患者説明

人工呼吸器装着(神経・筋疾患の場合)
荻野美恵子
(国際医療福祉大学市川病院神経難病センター・センター長 国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター・副センター長)

 本項では,人工呼吸器装着について,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)の進行性呼吸不全を例として,患者説明の例を示します.

1.現在の病気と予測される呼吸不全の病態の説明

 今後呼吸状態の悪化の可能性が強くなり,方針を考え始める必要があるという場面を想定して例示します.

【患者説明の例】

 現在,○○さんが患っておられるALSという病気はいろいろなところの力が弱くなる病気です.これまで手足の力が弱くなってしまったわけですが,最近の検査や症状をみると,息をするための呼吸の筋肉も弱くなってきているようです.残念ながら現在の医療では根本的によくすることが難しく,今後もさらに進行する可能性が高いです.呼吸の筋肉が弱くなると命にかかわることになりますので,呼吸を補助する機械を使うかどうか,考えなくてはならない状況です.

2.人工呼吸療法とそのほかの治療法

 呼吸筋力が低下して,換気が十分にできないために,二酸化炭素がたまり,さらに悪化すると血中酸素濃度も下がることになります.そのため,状態を改善するためには,換気を改善する治療が第1選択となります.呼吸器疾患と異なり,肺が悪いわけではないので,換気さえ十分にできれば酸素投与は必要ありません.呼吸器を使わない状態で酸素投与を行うと,呼吸抑制をきたすため,好ましくありません.ただし,夜間の一過性低酸素血症の改善や,換気補助を行わない(人工呼吸器は使用しない)方針の場合の呼吸苦改善のためには酸素療法を行うことがあります.

【患者説明の例】

 私たちは呼吸をすることで酸素を吸って,二酸化炭素を吐き出していますが,呼吸の筋肉が弱くなると肺が十分に膨らまなくなり,二酸化炭素を吐き出せなくなります.二酸化炭素がたまると,眠くなったりさらに呼吸が弱くなったりします.さらに呼吸が弱くなると酸素も足りない状況となり,

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