診療支援
患者説明

電気けいれん療法
野田隆政
(国立精神・神経医療研究センター病院精神科・医長)

1.現在の病状・病態

 電気けいれん療法(electroconvulsive therapy;ECT)は主にECTの効果が期待できるうつ病,双極性感情障害(抑うつ状態,混合状態,躁状態),統合失調症が治療の対象になります.統合失調症のなかでも緊張病症状を示す場合,急性発症,感情症状が伴っている場合では有効性が高いと考えられています.これらは高いエビデンスがあるか,エキスパートのなかで意見の一致が得られています.

 次いで,難治性強迫性障害や身体疾患による重症緊張病性障害・精神病性障害・感情障害,悪性症候群,難治性パーキンソン病,難治性発作性疾患,慢性疼痛といった診断では意見の一致が限定的であるか,エビデンスが示唆的なものに限られることから,ECTの適応を慎重に検討します.

 なお,適応は診断のみで決まることはなく,診断に加えて病状・病態,重症度,経過,治療歴などを評価し,他の治療法と比較して総合的に判断されます.

 以下,判断の材料となる状態や状況について解説します.状態や状況は,「薬物療法よりも優先的にECTが考慮される状態・状況(一次治療)」と「薬物療法などの標準的な治療のあとに考慮される状態・状況(二次治療)」の2つに分けると理解しやすくなります.

1)一次治療

(1)緊急性がきわめて高い状態(①)

 精神疾患の影響で飲食ができなくなり,次第に低栄養や脱水状態となります.身体的な衰弱に対して生命維持のために点滴や経鼻胃管などで栄養を補給しますが,これらは対症療法であり根本的な解決のためにはすみやかな精神症状の改善が求められます.また,自殺の危険性が逼迫,錯乱,過度な興奮・焦燥,自発的に表出できない状態である昏迷などでも,早急に病状を改善しなければ生命維持に影響します.

(2)ECTのほうが低リスクと考えられる状態(②)

 薬物療法は精神疾患の治療における大きな柱です.ところが,身体疾患

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