診療支援
患者説明

小児ネフローゼ症候群に対する免疫抑制薬(シクロスポリン)の使用
石倉健司
(北里大学医学部小児科学・教授)

1.ネフローゼ症候群とは

 「ネフローゼ症候群」とは,尿に大量の蛋白が漏れることで血液中の蛋白質が減少し,全身の浮腫・体重増加,乏尿などの症状を呈する疾患です.病気の詳しい原因はわかっていませんが,免疫を抑える治療が有効であることから免疫異常が関与しているのではないかといわれています.

 ステロイド薬が有効なことが多く,80~90%はステロイド感受性(ステロイド薬開始後4週間以内に寛解する)ネフローゼ症候群ですが,寛解後に約2/3が再発します1).なかでも繰り返し再発する患者さんは頻回再発型(初発後半年以内に2回の再発あるいは年に4回以上の再発)あるいはステロイド依存性(ステロイド薬減量中または中止後2週間以内の再発を2回以上繰り返す)ネフローゼ症候群となり,ステロイド薬使用の長期化による副作用が問題となります.そのため,再発を抑止し,ステロイド薬の使用量を減らすことを目的として免疫抑制薬が必要となります.

 また,全体の10~20%を占めるステロイド抵抗性(ステロイド薬開始後4週間以内に寛解しない)ネフローゼ症候群の患者さんは,将来的に腎臓の機能が低下する可能性が高くなるため,寛解導入を目的としてステロイド大量療法や免疫抑制薬が必要となります.

 ネフローゼ症候群に使用される免疫抑制薬はいくつかあり,ガイドライン2)にはシクロスポリンやシクロホスファミド,ミゾリビンなどが挙げられています.このうちシクロスポリンは本邦では最も広く使われており,保険適用もされています.

2.シクロスポリン(ネオーラル)について

 シクロスポリンは免疫にかかわるTリンパ球の機能を阻害することで免疫抑制効果を発揮する薬剤です.またステロイド薬などの耐性を引き起こす物質を作られにくくする作用や,腎臓の糸球体を包んでいる細胞に作用し尿蛋白を減少させる働きも報告されています1)

 当初は臓器移植の際の拒絶反応の

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