診療支援
患者説明

遺伝性疾患が疑われる場合の遺伝学的検査
小崎里華
(国立成育医療研究センター生体防御系内科部遺伝診療科・診療部長)

1.現在の病状・病態

 ヒトの体は,60兆個の細胞から成り立っており,1つの細胞の核には2万個以上の遺伝子が染色体に組み込まれて存在しています.遺伝子は,ヒトの体がうまく働くための精密な「人体の設計図」という重要な役割をもちます.

 受精した1つの細胞は,分裂を繰り返して増え,1個1個の細胞が,「目の細胞」,「腸の細胞」と役割を決めながら分化し,最終的に,細胞は60兆個まで増殖してヒトの体を形作ります.

1)染色体とは

 1つの細胞の中に,2万個以上の遺伝子が染色体46本(23対)に組み込まれています(図1).染色体は,常染色体(1~22番)と性染色体(X,Y)があります.遺伝学的な性別は性染色体の組み合わせにより,男性はXY,女性はXXとされます(図2).

 精子や卵子(配偶子)は,一般の細胞の半分の23本(1~22番,X/Y)の染色体をもちます.精子と卵子が受精して、1つの受精卵になり,染色体は計46本(23対)となります.子ども(受精卵)の染色体は各1対(2本)の染色体を,父・母それぞれから1本ずつ受け取って構成されます.父・母から,半分ずつ遺伝情報を引き継ぐことになります.

 染色体は顕微鏡で観察することができ,G(ギムザ)分染法やFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法によって染色体の総数や構造を調べることができます(図3).

2)遺伝子とは

 遺伝子の本体はDNA(デオキシリボ核酸)という化学物質です.「DNA」は,A(アデニン),T(チミン),G(グアニン),C(シトシン)という4つの塩基の連続した鎖です.1つの細胞の中で約30億個の塩基があり,数十~数千に及ぶ塩基の連なりが1つの「遺伝子」という構成単位を作っています.遺伝子はそれぞれの働きを担っています.

3)染色体・遺伝子と病気

 1人ひとりの顔や指紋、体格が違っているのと同じように,人によって生まれつき

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