診療支援
患者説明

分娩誘発・陣痛促進
澤田守男
(足立病院・院長)

1.分娩誘発・陣痛促進について

 通常満期(妊娠37~41週)になると,母体からホルモンが分泌され自然に陣痛が起こります.しかし,うまく陣痛が発来しない,あるいは,お母さんや赤ちゃんのために自然陣痛が来るのを待てない場合があります.「分娩誘発」とは,自然に陣痛が開始しない場合に子宮収縮薬などを使用して,陣痛を開始させることです.また,自然の陣痛が弱いために分娩の進行が停滞する場合にも子宮収縮薬などを使用しますが,これを「陣痛促進」といいます.

 分娩はできる限り自然に,お母さんや赤ちゃんにとって安全に終了することが理想です.しかし,有効な陣痛が開始しない場合や,お母さんや赤ちゃんの状態を考えると自然な陣痛が開始するのを待てない場合などがあります.このような場合には,子宮収縮薬などを使用して「分娩誘発」や「陣痛促進」を実施して,分娩を進行させることが選択肢の1つになります.

 子宮収縮薬などを使用することで,帝王切開術をせずに自然の状態に近い経腟分娩ができることを目標としています.しかし,途中まで経腟分娩を試みていた場合でもお母さんや赤ちゃんの状態が危険になることや,分娩が進行しないことがあり,急遽帝王切開術に方針を変更せざるをえないこともあります.

2.あなたに分娩誘発・陣痛促進が必要となる理由

 分娩誘発・陣痛促進は以下のような場合に実施されます.

1)前期破水

 陣痛が開始する前に破水してから分娩までの時間が長引いた場合,お母さんや赤ちゃんに感染,羊水過少に伴う臍帯圧迫,また,臍帯脱出(臍の緒が先に出てくることにより,お腹の中の赤ちゃんに十分な酸素などが届かなくなること)が起こることがあり,赤ちゃんの状態が悪くなる可能性が高まります.破水してから分娩までの時間は長時間に及ばないほうが安全です.よって,破水したあとでも一定時間以上陣痛が開始しない場合や陣痛が弱い場合には,分娩の進行を待

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?