診療支援
患者説明

甲状腺腫瘍に伴うRI内用療法
東 達也
(QST量子医科学研究所分子イメージング診断治療研究部・部長)
内山眞幸
(東京慈恵会医科大学放射線医学講座・教授)

1.現在の病状・病態

 甲状腺は身体の代謝や発達を活発化させる甲状腺ホルモンを分泌する組織です.甲状腺がんは甲状腺内部に発生し,場合によっては全身に転移します.多くの場合,甲状腺がんの主病変はまず甲状腺全摘(あるいは準全摘)手術により正常な甲状腺ごと切除されます.術後は甲状腺ホルモンが十分に分泌されなくなるため,患者さんは甲状腺ホルモンを補充する薬を一生飲み続けることになります.もし甲状腺がんがすでに甲状腺外部まで浸潤していたり,リンパ節や他の臓器に転移したりしており,手術で十分な切除ができなかった場合,追加の治療が必要となります.また,手術で浸潤部や転移巣も含めて切除し肉眼的には残存病変が認められない状態でも,微小ながん細胞の残存の可能性が高い場合には,補助療法が必要となります.

2.治療目的

 甲状腺全摘(あるいは準全摘)手術後に行う,体内に残存した甲状腺がんの転移巣,浸潤部に対する放射線治療が目的です.あるいは,手術後肉眼的に明らかに残存する病変は認められないが,微小ながん細胞の残存の可能性が高い場合,残存する病巣への補助療法にも用います.

3.治療法の概略と効果

1)概略

 正常甲状腺と分化がん(乳頭がんと濾胞がん)を中心とする多くの甲状腺がんはともにヨウ素を取り込む性質があります.この性質を利用して,放射線を出す放射性ヨウ素を残存するがんに取り込ませ,内部から放射線を照射する放射線治療の一種で,放射性ヨウ素内用療法ともいいます.ヨウ素131というアイソトープ(ラジオアイソトープ,RIともいう)を含んだカプセルを内服し,特別に設計されたRI治療病室に入院します.

2)効果

 甲状腺がんのなかでも,分化がん(乳頭がんと濾胞がん)が主な治療対象となります.ヨウ素を取り込む性質をもたない,あるいは取り込む性質の弱い,未分化がんやその他の甲状腺がんは対象にならないことがあります.「甲状腺腫

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