診療支援
患者説明

去勢抵抗性前立腺がん骨転移に対するゾーフィゴ内用療法
吉村真奈
(東京医科大学放射線医学分野・教授)

1.現在の病状・病態

 前立腺がんは,男性ホルモンによって増殖する性質があります.この性質を利用して,男性ホルモンの分泌や働きを抑えることにより,がん細胞の増殖を抑制する治療法がホルモン療法です.ホルモン療法は有効性が高く,前立腺がんの第1選択の治療法として広く行われていますが,ホルモン療法を続けるうちに効果がなくなり,再び病状が悪化することがあります.この状態を「去勢抵抗性前立腺がん(castration–resistant prostate cancer;CRPC)」といいます.

 前立腺がんは進行すると骨に転移しやすく,ことに去勢抵抗性前立腺がんにおいては,およそ80%もの高い頻度で骨転移が起こることが知られています.

 ゾーフィゴ内用療法は,疼痛などの症状の有無にかかわらず,去勢抵抗性前立腺がんでかつ骨に転移が認められている状態の患者さんが対象です.

2.治療目的

 骨転移の進行は骨の支持組織としての脆弱化をもたらし,労作時痛,安静時痛,突出痛,骨折,そしてそれらによる日常生活活動の低下を惹起します.さらに進行すると脊髄圧迫による麻痺や知覚障害を起こしたり,また直腸膀胱機能障害を呈したりすることもあります.これらを骨関連事象とよびます.骨転移に伴うこうした症状は,患者さんの生活の質を大きく低下させる原因になるばかりでなく,生存期間にも影響を及ぼすリスク要因となるため,できるだけ早い段階から適切な治療を始めて,病気の進行や症状を抑えることが大切です.去勢抵抗性前立腺癌の治療経過において,ゾーフィゴが骨転移治療に効果を発揮する段階であると判断された場合にこの治療を行います.ゾーフィゴ治療では症状の緩和に加え,病気の進行を抑えることで生存期間を延長することも期待されます.

3.治療法の概略と効果

 ゾーフィゴは,α線とよばれる放射線を出す医薬品で,骨の成分であるカルシウムと同じように骨

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