診療支援
患者説明

慢性疼痛に対する認知行動療法
細井昌子
(九州大学病院心療内科・講師)
安野広三
(九州大学病院心療内科・助教)

1.現在の病状・病態の説明

 慢性疼痛は典型的には3か月以上持続する,または通常の治癒期間を越えて持続する痛みの総称です.そもそも痛みは「組織損傷が実際に起こったとき,あるいは起こりそうなときに付随する不快な感覚および情動体験(怒り,恐れ,喜び,悲しみなど,比較的急速に引き起こされた一時的で急激な感情の動き),あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験」と定義されており(2020年国際疼痛学会),不快な感覚・感情の混合した体験ですので,嫌な痛みと合併して生活障害・感情的苦痛・人との交流障害といった機能障害が起こりがちで,生活の質(quality of life;QOL)が極端に落ちてしまうこともあります.

 慢性疼痛のさまざまな障害に合併しやすい物事の見方(認知)や行動様式について,図1に示します.痛みを悪化させる考え方や行動様式については個人では気づきにくく,症状との悪循環で悲観的となり,無力感に陥りがちです.

2.治療目的

 痛みは元来身体の警告反応であるため,痛み関連の恐怖から過度の警戒や,必要以上の安静といった回避行動(恐怖や不安を生起させる刺激に曝されないように前もって取る行動)が起こりがちで,そのために廃用性の萎縮・抑うつ・機能障害が起こり,それによってさらに痛みが悪化し悪循環が起こり,これは慢性疼痛の恐怖・回避モデルとよばれています(図21).そのため,痛みに対する破局的な考え(破局化)を変えることが治療的展開に導きます.

 基礎にある身体疾患について,医療の専門的な評価を受け多面的な観点で適切な対策を行っても持続している慢性疼痛に対しては,機能障害を進行させないために,身体的な対策とともに,病状に合った心理的アプローチを行うことが勧められています.心理的アプローチのなかでも,認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)は,19

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