診療支援
患者説明

結核の隔離入院について
佐々木結花
(国立病院機構東京病院呼吸器センター呼吸器内科・地域医療連携部長/副臨床研究部長)

1.現在の病状・病態

 結核は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」において二類感染症と定められています.患者さんが周囲の方に感染を広げる危険がある場合,隔離を目的として結核指定医療機関に「入院」しなくてはなりません.以下のような状況の場合,周囲の方への結核感染の危険があるため,都道府県知事は,感染症法第十九条,二十条に基づき,入院を勧告します.

1)肺結核喀痰塗抹陽性の場合

 喀痰の顕微鏡による観察で結核菌が認められる状況です.肺結核にて周囲の方に感染を広げてしまう病状です.法律のもと,結核専門医療機関への入院を勧告されます.

2)肺結核喀痰塗抹陰性培養陽性の場合

 咳嗽や喀痰などの呼吸器症状を有する場合,喀痰の顕微鏡による観察で結核菌が認められない(塗抹陰性)ものの,培養陽性であれば結核専門医療機関への入院が必要な状態であり,入院が勧告されます.また,気管支鏡検査で得られた検体や胃液採取検体で,結核菌が塗抹,培養,核酸増幅法のいずれかが陽性で,かつ咳嗽や喀痰などの呼吸器症状を有する場合,入院が勧告されます.

3)不規則治療や治療中断により再発している場合

 結核治療を外来で導入し,あるいは入院治療後の外来にて,治療を中断した場合や内服が不規則になり,増悪し感染性を有した場合,入院が勧告されます.

 勧告により入院した場合,患者さんは「周囲への感染源となりうる」と評価され,患者さんの人権が一部制限されます.感染症法第五条に「感染症の予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力し,その予防に寄与するよう努めるとともに,感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し,良質かつ適切な医療を行うとともに,当該医療について適切な説明を行い,当該患者等の理解を得るよう努めなければならない.」とあるように,医師その他の医療関係者は,患者さんは結核菌が喀痰から検出されており

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