診療支援
検査

初版(1997-1998年版)/編集者の序

 臨床検査の項目はどんどん増えているが,はたしてどのように使い,また役に立っているのであろうか.もちろん,臨床検査は患者の病態,診断,経過観察に欠かせない大変に強力な武器である.しかし,どこまで検査をすれば十分なのか,この辺に問題がありそうである.外来患者,あるいは入院患者にまず問診をし,その間にいろいろと鑑別診断を考えながら,質問を行い,次に身体所見をとりながら,鑑別を進め,さらに診断を考える.そこで,80~90%の場合,診断はある確率に従い,かつそれぞれの理由の基に2,3に固まっているはずである.はじめの一般検査項目としては何をオーダーするか(何も考えずにオーダーしてしまうのが一般的であろう).その理由はなぜか.何を知りたくてその検査をオーダーするのか.期待される結果はどうか.このような「考える」検査オーダーのプロセスは,大学病院を含む教育研修病院でさえもこの頃は行われていないのではないか.何が必要な検査で,何が無駄な検査なのか,その理由はなぜか,その根拠はどこにあるのか,などをもっと理論的に教え,考えるべきであろう.

 検査にもプライオリティがある.教育病院でさえも,はじめは一連の検査をオーダーし,その結果が戻ってから考えるという医師が多くなっている.「血尿,蛋白尿」があっても自分で尿の沈渣も見ない.熱があって,痰が出ていても「グラム染色」もしない.何も考えない.すぐに抗生物質とくる.「どの抗生物質をなぜ?」などとは誰も聞かない.心配だから,とにかく検査をしましょうということも多い.何が心配かというと,患者の病態が心配なのではなくて,医師が自信がないから心配なのであろう.

 このような傾向になったのにはいろいろ理由があろう.国民皆保険でしかも出来高制度の医療費支払制度,中央検査部の発達,医療器具の発達などが考えられる.その結果,医師が患者を診て,所見を取って,“Clini

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?