診療支援
検査

グラム染色
米谷 正太
(杏林大学・保健学部臨床検査技術学科)

呼吸器感染症─喀痰


図1 Streptococcus pneumoniae

グラム陽性の卵形やランセット形と表現される縦長の楕円形が2つ連なる双球菌であり,菌体周囲には莢膜が存在し,染色液で染まらない透明体として観察される.検体中には口腔内常在菌や上皮細胞はほとんど観察されない.


図2 Haemophilus influenzae

グラム陰性短桿菌であり多形性を示すこともある.Bordetella pertussis(百日咳菌)やPasteurella spp.との鏡検上での鑑別は難しい.分離培養での培地発育性(ヒツジ血液寒天培地上で発育なし,チョコレート寒天培地上で発育あり)が鑑別の一助となる.


図3 Moraxella catarrhalis

そら豆または腎臓形にたとえられるグラム陰性球菌が長辺を接して連なっている.Neisseria gonorrhoeae(淋菌)や,N. meningitidis(髄膜炎菌)なども同様の染色像形態であるが,M. catarrhalisは喀痰などの呼吸器材料から検出されるため,検査材料などの情報が鑑別の一助となる.


図4 Pseudomonas aeruginosa(ムコイド型)(a),Klebsiella pneumoniae(b)

a:グラム陰性桿菌である.菌体周囲が多糖体を成分とした粘液膜で被われており赤色に染色されている.粘液膜に被われた菌体は抗菌薬や貪食から守られた状態にあり,除菌困難な一因となる.b:グラム陰性桿菌である.Escherichia coli(大腸菌)よりもわずかに太めで両端が鈍円である.菌体周囲の明瞭な莢膜が染色液で染まらない透明体として観察されることがある.


図5 Legionella pneumophila

分類上はグラム陰性桿菌である.しかし本菌は,通性細胞内寄生体であるため貪食細胞内で観察されることが多く,喀痰,

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?