診療支援
検査

検査計画の進め方 消化管疾患
喜多 宏人
(国立病院機構東京病院・消化器センター長)

Ⅰ.尿・糞便・血液検査


1.基本検査

 消化管疾患を疑う病歴,症状,所見を有する患者に対し,消化管疾患の鑑別や,重症度把握,消化管以外の臓器疾患の有無,緊急性の有無などを判断するために必要とされる尿・糞便・血液検査の基本検査を表20に示す.緊急性の有無の判断は重要であり,消化管出血で来院した場合の血算値や,急性腹症で来院した場合の白血球値,CRP,AST,ALT,総ビリルビン,直接ビリルビン,ALP,γ-GT,アミラーゼなどがあげられる.また,下痢・脱水患者の体液バランスを補正する必要がある場合,尿素窒素,クレアチニンなどの腎機能やNa,K,Clなどの電解質値が必要になる.尿潜血陽性の場合,泌尿器疾患を疑う.


2.追加検査

 消化管疾患に対し,基本検査に加え必要に応じて適宜追加すべき検査項目を表21に示す.


Ⅱ.胸・腹部単純X線検査,心電図検査


1.胸部単純X線検査

 腸結核を疑う場合,肺結核の有無を確認し,消化管悪性腫瘍を疑う場合,肺転移の有無を確認する.ただし,いずれの場合も胸部CTが必要になることが多い.食道疾患では,たとえば傍食道型食道裂孔ヘルニアで,胸腔内にヘルニア嚢を認めることがある.その他,外科手術の可能性のある患者の術前検査や,食道疾患を疑う場合,鑑別としての心血管系のスクリーニング検査として行う.


2.腹部単純X線検査

 腹部単純X線検査で得られる所見を表22に示す.骨陰影で腹部の大まかなオリエンテーションをつけ,ガス像,石灰化像,臓器輪郭,便塊貯留などの情報を得る.特に,ガス像の情報は重要であり,消化管穿孔やイレウスを疑う場合必須である.遊離ガスや鏡面像を観察するためには,立位が適している.立位困難な場合,左下側臥位で撮像する.


3.心電図検査

 前胸部痛や心窩部痛を訴えた場合,虚血性心疾患を除外する目的で心電図検査を行う.また,内視鏡治療術前検査として心電図検査を行う

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