Ⅰ.糖尿病の検査の基本的考え方
糖尿病診療における検査は,糖尿病の診断,治療法の決定,治療効果の判定,合併症の検索とリスク判定および予防,血糖コントロール増悪時の原因検索などの際に必要となる.糖尿病は,「インスリン作用の不足による慢性の高血糖を主徴とし,種々の代謝異常を伴う疾患群」と定義される.したがって,糖尿病の診断には血糖測定による高血糖の証明が必須となる.慢性的な高血糖の証明には,血糖値を別の日に複数回測定することもできるが,できるだけ速やかに治療に入るためには通常HbA1cを血糖と同時に測定することが推奨されている.治療を考えるうえでは,糖尿病の診断時に慢性的な高血糖状態を証明するだけでは不十分で,1型糖尿病,2型糖尿病,その他の糖尿病などの病因分類とインスリン作用の不足の程度による病態(病期)分類ができるように,必要に応じてインスリン抵抗性やインスリン分泌能を検討するための検査や