診療支援
検査

検査計画の進め方 糖尿病
植木 浩二郎
(国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長)

Ⅰ.糖尿病の検査の基本的考え方

 糖尿病診療における検査は,糖尿病の診断,治療法の決定,治療効果の判定,合併症の検索とリスク判定および予防,血糖コントロール増悪時の原因検索などの際に必要となる.糖尿病は,「インスリン作用の不足による慢性の高血糖を主徴とし,種々の代謝異常を伴う疾患群」と定義される.したがって,糖尿病の診断には血糖測定による高血糖の証明が必須となる.慢性的な高血糖の証明には,血糖値を別の日に複数回測定することもできるが,できるだけ速やかに治療に入るためには通常HbA1cを血糖と同時に測定することが推奨されている.治療を考えるうえでは,糖尿病の診断時に慢性的な高血糖状態を証明するだけでは不十分で,1型糖尿病,2型糖尿病,その他の糖尿病などの病因分類とインスリン作用の不足の程度による病態(病期)分類ができるように,必要に応じてインスリン抵抗性やインスリン分泌能を検討するための検査や自己抗体の測定などを行う.また,尿糖や尿ケトン体,血中ケトン体の測定も病態把握に有用である.治療の決定やその効果判定においては,定期的な血糖値とHbA1cやグリコアルブミンなどの検査が必要である.さらに,合併症の検索とその予防には,糖尿病性網膜症に対する眼底検査や,糖尿病性腎症に対する血清クレアチニン,尿アルブミンや尿蛋白測定,動脈硬化性疾患に対する血清脂質測定や,心電図,頸動脈超音波検査などが行われる.


Ⅱ.糖尿病の診断のための検査

 患者は,慢性の高血糖による口渇,多飲・多尿,体重減少などの症状を訴えて来院する場合や,糖尿病性腎症・網膜症などの糖尿病に特有の合併症による自覚症状や他覚所見から糖尿病を疑われる場合,心血管病変の治療や予防に際してリスク因子の検索で糖尿病を疑われる場合,外科手術など他の疾患の治療に際してのスクリーニングで糖尿病を疑われる場合,検診・健康診断などで糖尿病を疑われて

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