グラム染色(Gram stain)にはHucker変法,Kopeloff法,Bartholomew & Mittwer変法など,さまざまな染色法が存在する(表57図).Hucker変法やBartholomew & Mittwer変法は脱色操作の時間が数秒違うと染色結果に大きく影響するため,経験が必要である.ここで紹介する西岡法(フェイバーGセット:日水製薬,グラムカラー:武藤化学)はステップが3段階と最も少なく,染色性に個人差がでにくい染色法である.グラム染色は施設により使用している染色液が異なるため,必ず添付されている説明書を一読していただきたい.
①塗抹(図39図):塗抹標本はできる限り薄く,均一になるように作製する(乾燥したときに,下に置いた文字が読めるくらい).
②乾燥:自然乾燥させる.
③固定(図40図):メタノール固定または火炎固定する.メタノール固定のほうが剝がれにくく,白血球などの細胞が萎縮しないため貪食像が見やすい.
④染色(図41図)
⑤媒染・脱色(図42図):(注)厚い標本は,脱色のしすぎ,脱色不十分などが原因で,染色性に個人差がでやすいため注意を要する.
⑥後染色(図43図)
⑦乾燥:濾紙などで染色面の裏側の水を拭き取り,自然乾燥させる.
⑧鏡検(図44図):1,000倍にて観察する.グラム陽性菌は青,グラム陰性菌は赤く染まる.好中球に貪食されている菌体は原因菌の可能性がきわめて高い.
[ポイント]
・白血球の核は青く,細胞質はピンクに染色される.塗抹の厚い標本は脱色されにくく,中心部が青黒く残る.
・媒染・脱色後の水洗を十分に行うときれいな標本に仕上がりやすい.
・後染色の際,サフラニン水溶液で十分染色した後にフクシン水溶液を1~2秒載せ水洗することで後染色の赤みに勾配が生じ,白血球に貪食されたグラム陰性菌や夾雑物内のグラム陰性菌も比較的見やすくなる.
・髄液などの夾雑物