目的 ①慢性肝炎と肝硬変の鑑別,②アルコール性肝炎の診断,③心筋梗塞急性期など筋疾患の診断
Decision Level
AST/ALT比の基準は,かつてKarmen単位が主流であった時代は1であったが,国際単位(IU)では約0.87に相当する.
●AST,ALT>500IU/Lの場合
急性肝炎では極期はAST/ALT>0.87,回復期はAST/ALT<0.87となることが多い.前者は,肝組織中ではASTの活性がALTの活性の3~4倍であることを反映しているためで,後者はASTの半減期(11~15時間)がALTのそれ(41時間)より短いためと考えられている.アルコール性肝炎の重症例もここに属す.
●AST,ALT<500IU/Lの場合
心筋,筋肉,溶血性疾患では,これらの細胞内にはASTが多く含まれることを反映して,AST/ALT>0.87となる.心筋梗塞の急性期はAST,LD,CK,赤沈などが上昇するため,AST/ALT>0.87となる.トランスアミナーゼの上昇は肝疾患ばかりでない点に留意したい.
アルコール性肝炎ではAST/ALT>0.87が特徴で,この比が2近くまで上昇する.ビタミンB6の低下や,筋肉からの逸脱が一因となる可能性があるが,両酵素の肝小葉内分布の差が一部関与するといわれる.すなわち,ASTが均一に分布するのに対し,ALTは門脈域近くに多く含まれる.アルコール性肝炎では小葉中心部に壊死が強いためAST優位の上昇をきたす.なお,アルコール性の脂肪肝でもASTのほうが高値をとることが多い.
また,小葉中心帯が虚血・低酸素状態になりやすいうっ血肝,ショック肝などでもAST/ALT>0.87となりやすい.
一方,慢性肝炎では逆に門脈域周辺に壊死が強く,ALT優位(AST/ALT<0.87)の上昇をきたす一因と考えられる.また,ASTとALTの半減期の差もALTの優位の一
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