診療支援
検査

心筋トロポニンT〔TnT〕   112点
troponin T
橋本 直明
(東都春日部病院・副院長)

基準値

・ECLIA:0.10ng/mL以下(急性心筋梗塞のカットオフ値)

・簡易測定キット:陰性(0.1ng/mL未満)


測定法

・ECLIA法

・イムノクロマト法(簡易測定キット:トロップTセンシティブ,ロシュ・ダイアグノスティックス社など)


検体量

・ECLIA:血清0.5mL

・簡易測定キット:全血150μL(ヘパリンまたはEDTA添加全血)


日数

・ECLIA:1日(測定時間60分)

・簡易測定キット:測定時間15分


目的 急性心筋梗塞の診断


Decision Level

●高値(基準値上限以上)

[高頻度]急性心筋梗塞 [可能性]不安定狭心症,心筋炎,高度の腎不全,非常に高度の骨格筋障害,心臓移植後の拒絶反応,開心術時の心筋障害 [対策]急性心筋梗塞,不安定狭心症,心筋炎を考えて診断と治療を急ぐ.赤沈,白血球数,CK,CK-MB,H-FABP,AST,LD,BUN,クレアチニン測定.心エコー,冠動脈造影.心電図モニター.ニトログリセリン投与など


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 トロポニンTは,トロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,心筋,横紋筋の収縮調節をつかさどる蛋白である.心筋と骨格筋で異性体が異なり,免疫学的に区別が可能で,現在心筋トロポニンTは,心筋特異性が最も高い検査である.

 心臓では心筋の構造蛋白であるとともに,一部は細胞質にも存在し,心筋壊死を反映して血中レベルが増加する.急性心筋梗塞では,約3~6時間後から上昇し,8~18時間後に最高値に達し,2~3週後まで有意な上昇が続く.急性心筋梗塞後,再灌流の有無で血中レベルの経時的変化が異なり,再灌流例では3~7日後に第2のピークを認め,非再灌流例では一峰性である.また,不安定狭心症の重症度の診断にも役立つ.心筋梗塞発症ごく早期(約2~3時間後は)H-FABPのほうが役立つ.

 腎排泄のため,高度の腎不全では影響を受ける可能

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