診療支援
検査

脂質検査の役割と選択基準
石橋 俊
(自治医科大学教授・内分泌代謝学)

異常値のでるメカニズムと臨床的意義

●主要な脂質検査

 脂質は生体の主要な構成成分であり,多様な構造と広範な機能を有する.臨床検査として実臨床で活用される代表的脂質には,コレステロールとトリグリセライド(TG)がある.胆汁酸,コレステロール関連脂質,脂肪酸,エイコサノイドなども臨床検査として測定対象になる脂質である.脂質ではないが,脂質異常と密接に関連する蛋白成分も脂質検査項目に含めて考えることが可能である.

 測定対象となる脂質によって臨床的意味合いは多様であるが,冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患の発症リスク予測を目的に計測されるコレステロールとその関連指標やTGの臨床的役割が大きい.コレステロールもTGもリポ蛋白と呼ばれる巨大な蛋白脂質複合体として血中を輸送される.したがって,それらの測定はリポ蛋白解析の簡便法としての意味合いが大きい.負の動脈硬化リスクファクターであるHDL-コレステロール(HDL-C)は直接測定される.総コレステロール値(TC),HDL-C,TG値からFriedewaldの式(TC-HLC-C-TG/5)で算出されるLDL-コレステロール(LDL-C)がLDL粒子数を反映するため,正の動脈硬化リスクファクターとして広く利用されてきた.しかし,TG値の増加にしたがいLDL-Cが過小評価される.特にTG>400mg/dLでは式を適用できないことになっている.そのような制約がなく,食後採血でも利用できるnon-HDL-C(=TC-HDL-C)のほうが簡便性・精度などの点でLDL-Cよりも優れるという見解もある.脂質異常症の基準値を示す(表67).LDLとHDLを反映する指標としてリポ蛋白の主要蛋白成分であるアポ蛋白Bとアポ蛋白A-Iとがそれぞれ利用されることもある.Lp(a)は蛋白量として直接計測される.Ⅲ型高脂血症ではアポ蛋白E含量の多いレムナントリポ蛋白が増

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