診療支援
検査

塩素〔Cl〕《クロール》   11点(包)
★★
chlorine
安田 隆
(吉祥寺あさひ病院副院長)

基準値

・血清Cl濃度:98~108mEq/L

・尿中Cl濃度:摂取状況や細胞外液量に影響されるため基準値はない.状態に応じて判断する

共用基準範囲 101~108mmol/L(血清Cl濃度)


測定法 イオン選択性電極法.通常の検査室での間接法(希釈法)と血液ガス分析時での直接法(非希釈法)があり,両者の結果に差異のみられることがある


検体量

・血清0.5mL

・蓄尿5mL


日数 0~1日


目的 NaおよびCl代謝異常,酸塩基平衡障害の診断


Decision Level

●血清Cl98mEq/L未満

[高頻度]低Na血症をきたす疾患,代謝性アルカローシス,薬剤性(ループ利尿薬,サイアザイド利尿薬) [可能性]呼吸性アシドーシス [対策]原因への対応を行う.Cl反応性代謝性アルカローシスではCl投与が必要

●血清Cl108mEq/L以上

[高頻度]高Na血症をきたす疾患,AG正常高Cl血症性代謝性アシドーシス [可能性]塩基性アミノ酸を含むアミノ酸輸液,呼吸性アルカローシス,薬剤性(塩酸セベラマー),偽性高Cl血症 [対策]原因への対応を行う


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 Clは細胞外液の陰イオンのおよそ70%を占める主要な陰イオンで,細胞膜通過性が低いためNaとともに細胞外液の張度形成物質としての役割を担っている.血清Cl濃度は通常では血清Na濃度と並行して変動し,細胞外液の電気的中性が維持されている.また,HCO3をはじめとした細胞外液の陰イオンの増減と逆向きに変動し,細胞外液の陰イオン濃度は一定に維持されている.したがって,血清Cl濃度異常は,血清Na濃度異常,HCO3の変動する酸塩基平衡異常,または他の陰イオン濃度の変動時に生じる.

 糸球体で濾過されたClは全ネフロンを通してNaとともに再吸収される.

 このように受動的な動態を示すClであるが,糸球体緻密斑においてレニン分泌を制御していること

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