診療支援
検査

砒素〔As〕
arsenic
安田 隆
(吉祥寺あさひ病院副院長)

基準値 尿:50μg/日未満(24時間蓄尿),50μg/gCr未満(随時尿)


測定法 誘導結合プラズマ分析法


検体量

・尿10mL

・検体を扱う際はメタルフリーの容器を用いる


日数 14~21日


目的 As中毒(急性・慢性)の診断


Decision Level

●高値

 100μg/gCr以上では中毒が疑われる(魚介類摂取のない場合)

[可能性]除虫剤,除鼠剤,除草剤の摂取.As汚染水の曝露 [対策]急性中毒では胃洗浄,活性炭使用.キレート剤としてジメルカプロールやジメルカプトコハク酸を使用する.慢性中毒では,Asをさけること以外に対策はない


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 Asは原子量74.92の元素で金属と非金属の両方の性質をもち,主に3価と5価の化合物を作る.Asは地殻中など自然界に広く分布しており,火山活動などの自然現象で環境中に放出されるため,土壌や水中にも含まれている.そして,農薬,硝子,セラミック,染料,木材防腐,半導体などで使用されている.As化合物は炭素を含む有機As(化合物),炭素を含まない無機As(化合物),そして砒化水素ガス(アルシン,AsH3)に区分され,生体への毒性は砒化水素ガスと無機As化合物とが強い.海産物にはAsが多く含まれるが,多くは毒性の低い有機Asである.人体にもごく微量存在している.

 As中毒は急性と慢性とがある.吸収は経口的もしくは皮膚や肺からの吸入を介してである.経口摂取された場合,無機As化合物は水溶性であるため,消化管で90%以上が吸収される.吸収されたAsは赤血球に入り,すぐに全身の組織に分布するため,単回投与後の血中濃度のピークは30~60分でしかない.Asのほとんどはそのままもしくは代謝されて尿中に排泄される.このため,As曝露の指標として24時間尿中As排泄量の測定が有用となる.尿中には植物由来の無害なAsと有害なAsとの総和として測

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