基準値 5μg/dL未満(0.10μmol/L未満)
測定法 HPLC
検体量 血清1mL
日数 4~17日
目的 肝臓病や脂質異常症の病態の把握
Decision Level
レチニルエステルの主成分(70~80%)であるレチノールパルミチン酸エステル(レチニールパルミテート)を測定する
●5μg/dL(0.10μmol/L)以上(高値)
[高頻度]ビタミンA過剰症,ビタミンA摂取後 [可能性]非代償性肝硬変,亜急性肝炎,脂質異常症(高脂血症Ⅲ型) [対策]ビタミンAの投与を中止し,原因疾患の治療を行う
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
食物中のビタミンAは,小腸粘膜上皮細胞内でレチニルエステルとなり,カイロミクロン(CM)のコア(芯)に取り込まれる.そして,CM中に含まれて肝臓に運ばれる.レチニルエステルは食後一時的に血中に存在するが,肝レムナント受容体を介して肝細胞に取り込まれ,空腹時にはほとんど検出されない.血清ビタミンAの主成分はレチノールであり,レチニルエステルは,ビタミンA欠乏の指標にはならない.ビタミンA過剰症,肝実質障害時の肝予備能,アポリポ蛋白E代謝などを知るために測定される.
重症肝障害では,肝レムナント受容体の減少のために,CMの取り込みが遅延する.脂質異常症(高脂血症)では,VLDLレムナントとCMレムナントの競合のために,肝におけるレチニルエステル・クリアランスが遅延することが考えられる.ただし,いずれもあらかじめ肝にビタミンAの蓄積があることを前提とする.
「レチノール」の項も参照→されたい.
判読
空腹時には血中にレチノールパルミチン酸エステルは検出されない.
採取保存
厳密に早朝空腹時に採血する.血清(血漿)分離を速やかに行い,-20℃以下で,遮光して保存し,なるべく1週間以内に測定する.
薬剤影響
「レチノール」の項参照→.
測定前後の患者指導
①総合ビタミン薬
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