診療支援
検査

凝固因子活性検査 第Ⅻ因子   223点(包)
factor Ⅻ
橋口 照人
(鹿児島大学大学院教授・血管代謝病態解析学分野)

基準値

・凝固法:60~140%

・合成基質法:90±30%


測定法 凝固時間法,ELISA,RIA法


検体量 血漿0.3mL(クエン酸加)


日数 2~6日


目的 第Ⅻ因子欠乏症の診断


Decision Level

●25~60%(低下)

[高頻度・可能性]DIC,肝硬変,ネフローゼ症候群,L-アスパラギナーゼ投与 [対策]原疾患の治療

●25%未満(高度低下)

[高頻度・可能性]敗血症に伴うDIC,非代償性肝硬変,第Ⅻ因子欠乏症 [対策]原疾患の治療


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 第Ⅻ因子(Hageman factor)は肝で産生され,分子量8万で血中濃度は約30~40μg/mL,血中半減期は2~3日である.遺伝子は第5染色体にある.

 第Ⅻ因子は異物(陰性荷電)表面で一部活性化される.活性化第Ⅻ因子は異物表面上で高分子キニノゲン(HMWK)の存在下にプレカリクレインをカリクレインに変換または第Ⅺ因子を活性化する.試験管などで血液が異物面と接触すると最初に活性化される凝固因子であるが,先天性欠乏患者には出血傾向が認められないため生体における止血には関与が少ないと考えられている.一方,第Ⅻ因子欠乏マウスでは脳梗塞が発症しにくいことより,第Ⅻ因子阻害薬が出血を伴わない副作用の少ない抗血栓薬として期待されている.なお,プレカリクレインや第Ⅺ因子は血中でHMWKと結合して存在している.カリクレインは,HMWKの存在下で第Ⅻ因子を活性化し,HMWKからブラジキニン(血管拡張,血圧低下,浮腫,痛みなどの生理作用をもたらす)を放出させ,プロウロキナーゼをウロキナーゼ(プラスミノゲンアクチベーター)(主として組織線溶に参画する)に変換する.第Ⅺ因子の活性化は第Ⅻ因子がなくてもトロンビンにより可能であるので,第Ⅻ因子は凝固よりもキニン系や線溶への関連のほうが重要という考えもある.第Ⅻ因子は補体の古典的経路を

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