診療支援
検査

アンチトロンビン〔AT〕   70点
antithrombin
橋口 照人
(鹿児島大学大学院教授・血管代謝病態解析学分野)

基準値

・80~130%(活性)

・25~35mg/dL(LPIA)

・15~31mg/dL(TIA)


測定法 合成基質法(活性),LPIA(抗原),TIA(抗原)


検体量 血漿0.4mL(クエン酸加)


日数 2~4日


目的 DICや血栓症の診断,重症度判定,治療方針の指標,先天性AT欠乏症の診断


Decision Level

●45~80%(低下)

[高頻度]DIC,血栓症,肝硬変,肝癌,ネフローゼ症候群,敗血症 [可能性]AT欠乏症,経口避妊薬,L-アスパラギナーゼ投与 [対策]プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),フィブリノゲン,トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT),FDP,プラスミノゲン,α2-プラスミンインヒビター(α2-PI)の測定

●45%未満(高度低下)

[高頻度]DIC,敗血症,多臓器不全,血栓症,非代償性肝硬変,劇症肝炎 [可能性]AT欠乏症 [対策]DICの存在の確認,原疾患の治療,ヘパリンあるいはAT投与の適応の考慮


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 主として肝で(血管内皮細胞においても)産生されるAT(保険検査名のアンチトロンビンⅢと同義語)は,セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)で生理的に作用する凝固制御因子である.分子量約58,000で,血中濃度は約300μg/mL,血中半減期は約3日である.遺伝子は第1染色体にある.トロンビンや活性化第Ⅹ因子(FⅩa)と結合(複合体を形成)してこれらの因子を失活(阻害)して,凝固反応を制御する.また,FⅨa,FⅪa,FⅫa,カリクレイン,プラスミンなどの活性も阻害する.ATにはトロンビンやFⅩaと結合する部位と,ヘパリンと結合する部位とがある.ヘパリン非存在下ではトロンビンやFⅩaとゆっくり結合して阻害(進行性阻害)するが,未分画ヘパリン存在下ではATの立体構造が変化してトロンビンや

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