基準値 IgG抗体,IgA抗体:陰性(P/N比1.5以下)
測定法 ELISA
検体量 血清0.3mL
日数 9~14日
目的 アニサキスに対する抗体価の測定.腸管の肉芽腫や腫瘤の形成にアニサキスが関与しているか否かの補助診断,異所性寄生の補助診断
NOTE 現在,多くの検査会社が受託を中断している(検査用の試薬は販売されている)
Decision Level
●陽性
[高頻度]検査の陽性は,過去に胃や腸の粘膜にアニサキスが穿入し抗体を産生したことを示す.ペア血清で値の上昇があれば,最近,アニサキスの穿入を受けたことを示す
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
アニサキスは海に棲む哺乳動物(イルカ,鯨など)を好適宿主とし,その腸管に寄生する線虫である.その幼虫は中間宿主(魚やイカ)に感染している.ヒトはこれを生食し幼虫が胃や腸の粘膜に穿入する.ヒトはアニサキスにとって好適宿主ではないので感染は成立せず,やがて脱落する.
この穿入自身は,若干の痛みがあっても病気と認識されるレベルではない.したがって全く初めての穿入の場合には,気がつかないのが普通である.ところが,この侵入に伴ってアニサキスの分泌物が胃の粘膜に注入されるので,もしこの成分に対する抗体を作ってしまったヒトは,以後の穿入時にはアレルギー反応を起こす.胃壁に穿入すれば胃アニサキス症,腸壁に穿入すれば腸アニサキス症となる.
新鮮な海産魚類を生食して数時間後に急な腹痛を起こせばアニサキス症が疑われるが,その経過は早い.胃アニサキス症の場合,即時に胃内視鏡を行えば診断と治療が終了する.抗アレルギー療法や対症療法も効果がある.したがってこのような急性期には,時間がかかるアニサキス抗体検査の臨床的な意義は限定的である.
しかし肉芽腫や限局性浮腫を消化管に形成し,画像診断でも確定診断に至らない場合に本検査は,補助診断として役立つ.またアニサキスが腸