Decision Level

●ジェノタイプA，B，C，D型のいずれかの陽性

[高頻度・可能性]HBVのジェノタイプ判明　[対策]急性肝炎の予後推定，慢性肝炎の予後推定・治療法選択

異常値のでるメカニズムと臨床的意義

　HBs抗原陽性(HBV感染)者におけるジェノタイプ(遺伝子型)をPreS2抗原エピトープの違いによって検出する．ゲノムの塩基配列に8％の違いがある場合に異なったジェノタイプと判定する．HBVにはA～HとJの9種類のジェノタイプが存在するが，わが国ではA，B，C，Dでほとんどが占められている．HBVジェノタイプの分布には地域特異性があり，わが国では従来からジェノタイプCとBが多い．

　HBs抗原のPreS2領域には4種のモノクローナル抗体によって判別できるエピトープm，k，s，uが存在し，ジェノタイプA，B，C，Dでは，それぞれsu， m， ks， ksuのエピトープをもっている．このため，m，k，s，uの4つのエピトープの組み合わせによりジェノタイプA，B，C，Dを判定することができる．

　ジェノタイプによって臨床像に大きな違いがある．ジェノタイプBではHBe抗原からHBe抗体へのセロコンバージョン(seroconversion；SC)が自然に起こりやすく，肝炎が早期に鎮静化することが多く，進行した肝病変となることは少ない．これに対して，ジェノタイプCではHBV-DNA量が多く，SCが起こりにくく，肝癌発生のリスクが高い．実際に，わが国で進行肝硬変や肝癌で入院する患者のほとんどはジェノタイプCである．急性B型肝炎においては，わが国で従来みられたジェノタイプB，CのHBVによる感染の割合が