診療支援
検査

シアリルTn抗原〔STN〕   146点(包)
sialyl Tn antigen
安井 寛
(聖マリアンナ医科大学特任准教授・内科学(血液・腫瘍内科))
今井 浩三
(札幌しらかば台病院 先端医療研究センター所長/札幌医科大学名誉教授)

基準値 45U/mL以下


測定法 RIA


検体量 血清0.3mL


日数 2~6日


目的 卵巣癌や消化器癌の診断,治療効果,再発の指標


Decision Level

●45~100U/mL(軽度~中等度増加)

[高頻度]卵巣癌,胃癌,大腸癌,膵癌 [可能性]胆道系癌,肺癌,子宮頸癌,婦人科系良性疾患,肝炎,肝硬変,胆石,肺結核などの良性呼吸器疾患,血液型がBないしABの健常者 [対策]上記癌の存在を想定し,各種画像診断(CT,MRIなど)や他の腫瘍マーカー,血液学的検査により診断を確定する.また高値例は,遠隔転移,腹膜播種の可能性が高く,また治療後の再発率も高いことから精査,フォローには細心の注意が必要である

●100U/mL以上(高度増加)

[高頻度]卵巣癌 [可能性]胃癌,大腸癌,膵癌,胆道系癌,子宮頸癌,良性呼吸器疾患 [対策]卵巣癌が強く示唆されるため,各種画像診断などを厳密に行う.また胃癌,大腸癌で高度増加を示す場合には進行期,再発,腹膜播種などの場合が多く,これらの有無を厳密に検査する必要がある


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 STNは癌関連の糖鎖抗原の1つで,ムチン型母核糖鎖のグループに属し,構造はNeuAc α2→6GalNAc α1→Ser/Thrである.なぜ癌細胞で上昇するかについては糖鎖不全説,糖転移酵素の異常により本来糖が転移されないSer,Thr残基にも本抗原の合成が起こるため抗原性が強くなるという説などがある.またヒト胎児の腸管に強陽性を示すことから発育分化抗原として意義をもつという考えもある.臨床的には卵巣癌と消化器癌で高値を示す特徴がある.卵巣癌の40~50%で高値を示し,偽陽性はきわめて少ない.胃癌,大腸癌,膵癌など20~40%の陽性率を示す.早期癌での陽性率は低いが進行癌ではかなり高い陽性率を示し,進行したステージの患者の経過観察に有用である.胃癌や大腸癌

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