診療支援
検査

馬尿酸〔HA〕
hippuric acid
大谷 壽一
(慶應義塾大学医学部教授・慶應義塾大学病院薬剤部長)
伊賀 立二
(東京大学名誉教授)

測定法 HPLC,GC


採取保存 採取した尿は,可及的速やかに検査することが望ましい.尿の保存は,冷凍保存を原則とするが,腐敗に注意すれば冷蔵も可


検体量 尿1~3mL


対象曝露物質 トルエン,(スチレン,シンナー; 通称アンパン)


日数 4~10日


臨床的意義

 有機溶剤作業に従事する労働者を対象として行われる特殊健康診断(有機溶剤等健康診断)の検査項目の1つである.馬尿酸は,トルエンやスチレンの代謝物であり,尿中に排泄される.したがって,尿中馬尿酸濃度は,労働者のこれら有機溶媒に対する曝露の指標となる.なお,有機溶剤中毒予防規則上は,トルエンに対する曝露の指標であり,スチレンに対しては尿中マンデル酸を測定する.果物に含まれる安息香酸や感冒薬に含まれる安息香酸Naカフェインなどの摂取により高値を示すことがある.結果の評価については,正常・異常の鑑別目的としたものではなく,作業環境を含めた総合的な判断が必要となる.


濃度の解釈

 分布1:1g/L以下

 分布2:1g/Lを超え,2.5g/L以下

 分布3:2.5g/L超

 (分布1:作業環境管理が適切であると判断される状態.分布2:作業環境管理になお改善の余地があるため,原因の探索と対策の立案が望ましい状態.分布3:作業環境管理が不適切であると判断されるので,原因の探索と対策の立案を行う必要がある状態)

 非曝露者の平均値は男性で0.3g/L,女性で0.4g/L程度であり,1g/Lを超えることはまれである.トルエン100ppm曝露に対応したスクリーニングレベル(95%下限値)は1.8g/Lである.いちご,すももなどの果実や,安息香酸を食品添加物として含有する清涼飲料水などの摂取によっても変動することがあるので,これらの摂取状況を確認する必要がある.


採尿時期

 作業日が連続している場合においては,連続した作業日のうちで2日目以降の当該作業終了時に行うこ

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