診療支援
検査

薬物代謝酵素の遺伝子診断
大谷 壽一
(慶應義塾大学医学部教授・慶應義塾大学病院薬剤部長)
澤田 康文
(東京大学大学院客員教授・育薬学講座)

異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 薬物の作用には個体差があることは,古くから知られていることであるが,その原因について詳細な検討が行われるようになったのは比較的最近になってからである.薬物作用の個体差は,薬物体内動態の個体差と,薬理反応の個体差にその原因を求めることができる.

 薬物体内動態の個体差の原因としては,後天的な要因(臓器障害や疾患,年齢など)もあるが,近年では先天的(遺伝的)要因に注目が集まっている.特に薬物の代謝過程には,先天的な個人差が大きい.お酒に強い人と弱い人ではアルコールの解毒能力にかなりの個人差があるのと同様に,薬の解毒代謝能力にも体質的(=遺伝的)に個人差がある.薬物動態を論ずるうえでは,特定の代謝酵素の活性が欠損(または極端に低下)している患者はpoor metabolizer (PM)と呼ばれる.これに対して,通常の解毒代謝活性を有する患者はextensive

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