病態
鑑別診断には腫瘍の好発部位が重要であり,前縦隔では奇形腫,胸腺腫,甲状腺腫が多く,特に上前縦隔での発生頻度が高い.中縦隔では気管支嚢胞,心膜性嚢胞,後縦隔では神経原性腫瘍,消化管嚢胞が多い.リンパ腫は,中縦隔,前・後縦隔上部に多発するが,リンパ節の分布領域には発生しうる
[参考]
肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2021年版
異常値
・胸部X線 正面像,側面像により腫瘍の占拠部位を確認.大きさ,腫瘍の性状などを把握する.しかし単純写真のみでは診断できない場合があり,CTが是非とも必要
・胸部CT 胸部X線所見に加えて造影検査を行うことにより,部位について,より多くの情報が得られる.生検のアプローチを検討するのに有用
・血算・生化学検査 一般検査で異常を認めることは少ない.胸腺腫では赤芽球癆,低γ-グロブリン血症を合併.α-フェトプロテインが絨毛性腫瘍で高値となることがある.HCG-β,可溶性IL-2受容体も参考となる
・腫瘍生検 腫瘍の位置によって経胸壁針生検,リンパ節生検,胸腔鏡下生検,縦隔鏡下生検を施行.開胸生検が必要な症例もある
・67Gaスキャン 腫瘍の悪性度を推測するのに有効な場合がある
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●胸部X線 治療は悪性リンパ腫など一部の疾患を除いて外科的切除を行うが,術後に週1回程度.全身的化学療法や放射線治療を行う症例では治療期間で週1回程度,その後は1~3カ月ごと
●胸部CT 経過観察の目的で,外科的切除後3~6カ月に1回程度.組織型により間隔は異なる
●血算・血液像 全身的化学療法を施行する症例で治療期間中は週2~3回,適応によりG-CSFレスキューを施行.放射線治療を行う症例でも治療期間中は週1回程度チェック
●生化学検査 全身的化学療法を施行する症例で治療期間中は週1回程度の肝機能,腎機能の検索.症例により可溶性IL-2