病態
正常肝ないし肝機能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週以内に,高度の肝機能障害に基づいてプロトロンビン時間が40%以下ないしはINR値1.5以上を示すものを「急性肝不全(ALF)」と診断する.肝性脳症の昏睡度がⅠ度までの場合は「非昏睡型」,Ⅱ度以上の場合は「昏睡型」に分類し,後者は初発症状出現から昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症が出現するまでの期間が10日以内の「急性型」と,11日以降56日以内の「亜急性型」に区分する.ALFは,肝炎ウイルス,薬物アレルギー,自己免疫性などによる肝炎とともに,循環障害,薬物中毒,代謝性疾患など肝炎以外の要因によっても生じ,広汎ないし亜広汎肝壊死から,短期間に肝不全症候が出現する病態である.肝炎症例のうち,昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を呈する症例は劇症肝炎(fulminant hepatitis;FH)と診断する場合がある.詳細は文献(持田 智:急性肝不全とその類縁疾患: わが国における動向.日本消化器病学会雑誌 117:739-749,2020)を参照.
異常値
・ビリルビン 15mg/dL以上は予後不良の徴候
・AST,ALT 初期に著増.病態の悪化と共に低下.必ずしも病態と一致しない
・末梢血血小板数 低下(DICを合併)
・プロトロンビン時間 40%以下ないしはINR1.5以上
・血漿アンモニア 高値
・血中HGF値 高値
・血液ガス PaO2低下(呼吸循環不全).代謝性アシドーシス(肝性昏睡).代謝性アルカローシス(低K血症).呼吸性アシドーシス(脳浮腫).呼吸性アルカローシス(呼吸中枢刺激)
・腹部超音波 腹水貯留と肝の萎縮(予後不良の徴候)
・腹部CT・MRI 腹水貯留と肝の萎縮
・脳波 徐波化,3相波
・頭部CT・MRI ときに脳浮腫
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●血液検査 [急性期]毎日 [回復期]週2回
●肝炎ウイルスマーカー(