診療支援
検査

膵嚢胞
打矢 紘
(埼玉医科大学・消化器内科・肝臓内科)
水野 卓
(埼玉医科大学准教授・消化器内科・肝臓内科)
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

病態

 内面が上皮に覆われた真性嚢胞と,上皮のない仮性嚢胞に大別される.真性嚢胞には,腫瘍性嚢胞である膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),膵粘液性嚢胞性腫瘍(MCN),膵漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)などがある.仮性嚢胞には,膵液の貯留した貯留嚢胞と,急性膵炎後の膵および周囲脂肪組織の壊死物質が被包化された被包化膵壊死(WON)がある.


[参考]

 IPMN国際診療ガイドライン2017年版,2018


異常値

・腹部超音波,造影CT 嚢胞の大きさ,形状,壁在結節・主膵管拡張の有無

・MRI(MRCP) 上記に加え,主膵管との交通の有無

・EUS 隔壁肥厚や壁在結節など,より詳細な観察が可能.内腔の性状から貯留嚢胞とWONの鑑別に有用

・血液検査 アミラーゼ・リパーゼ上昇(正常のことも多い).CA19-9は腫瘍性嚢胞で高値となることがあり,また膵癌を合併したときにも上昇する


経過観察のための検査項目とその測定頻度

・腹部超音波・造影CT・MRI(MRCP) [安定期]6カ月~1年ごと

・血液検査 [安定期]アミラーゼ,リパーゼ,腫瘍マーカー(CA19-9,CEA)を3~6カ月ごと


診断・経過観察上のポイント

■IPMN 主膵管と交通を有する多房性嚢胞で,ブドウの房様の形状が典型的.嚢胞と膵管拡張の肉眼形態により主膵管型・分枝型・混合型に分類される.主膵管型・混合型は癌化リスクが高く,手術を検討.分枝型では,high-risk stigmata(造影される5mm以上の結節や主膵管径≧10mmなど)を認める場合,手術を検討.また,worrisome features(膵炎合併,嚢胞径≧30mm,造影される5mm未満の結節,主膵管径5~9mmなど)を認める場合はEUSを施行し,手術を検討する.手術適応なしと判断された場合,嚢胞径に応じて3~6カ月ごとの経過観察が推奨される.

■MCN 主膵管と交通のない多房性嚢胞で,

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