診療支援
検査

遺伝性代謝疾患 糖原病
永田 正男
(ふくやま病院内科)

病態

遺伝的なグリコーゲン代謝に関する酵素欠損あるいは活性低下により,主に肝・筋のグリコーゲンの異常をきたす.糖原病の大部分はグリコーゲン分解系の酵素障害によるものであるが,Ⅳ型のように合成酵素の活性障害によりグリコーゲンが不溶性になり組織に蓄積するものもある.図112で示すように酵素部位により0~15型に分類されている.肝型(Ⅰ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ,Ⅸ)は肝腫大,低血糖を示し,筋型(Ⅱ,Ⅲ,Ⅴ,Ⅶ)は筋力低下を示す.まれな筋型として,0型,Ⅳ型,Ⅸ型,PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)欠損症,Ⅹ~ⅩⅤ型がある


[参考]

 先天代謝異常症の診療指針,2012


異常値

・血糖 肝における糖産生が障害されるため,空腹時に血糖上昇がなければ,Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ型を疑う.Ⅲ型では空腹時血糖上昇はないが,食後には上昇を認める.Ⅸ型では血糖上昇は必ずしも侵されない

・脂質異常症,高尿酸血症 Ⅰ型では高乳酸血症による尿酸腎クリアランスの低下,プリン体生合成の促進などにより高尿酸血症,低血糖のためFFAおよびグリセロールの上昇を伴う.Ⅶ型では筋肉運動に伴い尿酸の上昇を認める

・乳酸・ピルビン酸 Ⅰ型ではグルコース-6-リン酸(G-6-P)が主に解糖系に入るため上昇する.FFAの肝の流入が関与しているため,グルコース負荷によりかえって血中乳酸は低下.ガラクトース負荷では,血糖は上昇せず乳酸はさらに上昇する.肝型(Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ)では,食後もしくはグルコース負荷で乳酸値は上昇する

・グルカゴン負荷テスト グルカゴンはグリコーゲンを分解してグルコースに導くので,血糖上昇がなければⅠ,Ⅲ,Ⅵ型が疑われる.Ⅰ型では急激な代謝性アシドーシスを起こした症例があるため,Ⅰ型が疑われる場合はグルカゴン負荷試験は行わず,その他の検査を優先する.Ⅲ型では空腹時の負荷試験で血糖上昇はないが,食後2時間の負荷試験では血糖が上昇する.Ⅵ型では空腹時

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