病態
急激な腎機能の低下により,窒素代謝産物(クレアチニンなど)の蓄積と,細胞外液量と電解質調節の乱れをきたす状態
NOTE KDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcomes)の診断基準(表233図)によりAKIの診断と病期分類を行う.腎障害の原因について,腎前性(腎血流量減少),腎性(糸球体腎炎,尿細管壊死,間質性腎炎),腎後性(尿路閉塞)に分けて鑑別することが診断・治療に重要である.
従来,「腎機能の低下の結果,高窒素血症,浮腫,高血圧,肺水腫,高K血症,貧血,アシドーシスなどを生じた状態」を急性腎不全として扱ってきたが,集中治療室などで発症する腎障害では「軽度の腎機能低下や尿量の減少」も生命予後に影響することから,より早期の段階で診断し治療することが求められ,急性腎障害(AKI)という概念が提唱され,急性腎不全に代わり広く用いられるようになってきた.
[参考]
AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016
異常値
●AKIによる病態の変化の指標
・血液検査 血清Cr,BUN,血清K,血清Pなどの上昇,血清Ca,Hbの低下
・血液ガス アニオンギャップ開大を伴う代謝性アシドーシス
・胸部X線 心拡大,肺うっ血
・尿量 400mL/日未満,もしくは0.5mL/kg/時未満が6時間以上持続
●原因の鑑別に利用される指標
・尿所見(定性・沈渣) 腎前性は異常は少ない,蛋白と潜血陽性(急速進行性糸球体腎炎)
・尿Na濃度(mEq/L) 腎前性<20 ,腎性>40
・尿浸透圧(mOsm/kg・H2O) 腎前性>500,腎性<350
・FENa(%) 腎前性<1 ,腎性>1〔FENa=(尿Na濃度×血清Cr/血清Na濃度×尿Cr濃度)×100〕
・FEurea(%) 腎前性<35 ,腎性>35〔FEurea=(尿Urea濃度×血清Cr/血清Urea濃度×尿Cr濃度