診療支援
検査

多発性嚢胞腎(PKD)
河野 春奈
(順天堂大学大学院准教授・泌尿器外科学)
堀江 重郎
(順天堂大学大学院教授・泌尿器外科学)

病態

 常染色体顕性遺伝により両側に多発腎嚢胞を認める常染色体顕性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease;ADPKD)は,60歳台までに半数が透析へ移行する.一方,常染色体潜性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease;ARPKD)は胎児期から形成される遺伝性腎疾患である.本項ではADPKDについて概説する


[参考]

 エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020


異常値

・超音波 両側に多発する腎嚢胞を認める.ADPKDの診断目的のスクリーニングに優れる

・CT 肝嚢胞を伴うことも多い.尿路結石を認めることがある

・MRI 腎容積を測定するためには最も信頼性が高い.腎嚢胞の増加・増大に伴い腎容積も増大する

・尿検 血尿,膿尿を認めることがある.尿蛋白量は腎機能低下に伴うが,みられないこともある

・血清Cr値 初期には異常値を呈さないことが多い

・eGFR値 腎嚢胞が大きくなり腎容積が大きくなると逆相関して腎機能は低下する

・血圧 腎機能が正常でも高血圧を生じることがある


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●腎機能検査‍ [慢性期]血清Cr値,eGFR,Ccr,尿蛋白量を腎機能低下,高血圧のない場合は6カ月~1年ごと.異常のある場合は2~3カ月ごとに検査する

●CT・MRI‍ [慢性期]重症度判定と腎容積測定を目的として行う.国の難病の医療費助成を受けるためには,1年ごとのCTもしくはMRIにより腎容積を算出する.また,治療薬であるトルバプタンの適応となるのは両腎容積750mL以上,かつ年間5%以上の腎容積増大であり,腎容積測定は治療対象症例の選択にも重要である


診断・経過観察上のポイント

①家族内発生が確認されている症例では,両腎に各々3個以上の嚢胞があ

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