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検査

急性アルコール中毒
坂本 哲也
(帝京大学教授・救急医学/帝京大学附属病院・病院長)

病態

 エタノールの中枢神経抑制作用による意識障害が主たる症状である.重症例では昏睡となり,誤嚥や窒息と呼吸抑制によって死亡する


異常値

●血中エタノール濃度 昏睡や呼吸抑制を生じる濃度は個人差が大きい.飲酒歴の少ない者は300mg/dLで昏睡となるが,大酒家は500~600mg/dLに達しても覚醒していることがある.300mg/dL以下なのに昏睡であれば,他の薬物の併用や頭部外傷,脳血管障害などエタノール以外の原因を検索する

NOTE 2002年6月施行の改正道路交通法では,「酒気帯び運転」の定義が血中エタノール濃度50mg/dLから30mg/dL以上(呼気中エタノール濃度0.15mg/L以上)に引き下げられた.なお,「酒酔い運転」は酒気帯びの基準値以上の血中エタノール濃度であり,「アルコールなどの影響により正常な運転が困難な状態にある」ことと定義されている

●血漿浸透圧 エタノールにより血漿浸透圧が上昇するため,浸透圧ギャップが開大する.ただし,エタノールが蒸発しないように氷点降下法で測定する必要がある.血中エタノール濃度を直接測定できない場合は,以下の計算式で推定できる


・推定エタノール濃度

=4.6×{血漿浸透圧の実測値-(2×[Na]+[血糖]/18+[BUN]/2.8)}


●血糖値 糖新生の障害により特に小児,低栄養患者や肝機能低下患者で低下する

●β-ヒドロキシ酪酸と乳酸 それぞれが増加しアルコール性ケトアシドーシスおよび乳酸アシドーシスを生じる

●血液ガス 呼吸不全があればPaO2の低下とPaCO2の上昇,pHの低下

NOTE‍ 慢性エタノール依存症患者

・慢性のエタノール依存症患者は低Mg血症,低K血症,低P血症,低チアミン(ビタミンB1)血症をしばしば合併する.これらが疑われれば直ちに補正する必要があるが,特に低Mg血症による不整脈や低チアミン血症によるWernicke(ウェル

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