診療支援
治療

頻尿
pollakisuria
木村眞一
(きむら訪問クリニック院長)

A.ER診療のポイント

●頻尿とは異常に短い間隔(2時間以下)で排尿がある症状を意味する.通常は日中覚醒時で8回以上,就寝後に3回以上の尿意を自覚する.しばしば尿意切迫(排尿が我慢できなくなる切迫感),時に尿失禁を併発する.

●最多の原因は下部尿路感染症(膀胱炎,尿道炎)なので,尿路感染症を仮定し,問診で確認をしていく.

●上行感染(腎盂腎炎)の除外診断を意識して診察を行う.

●多くは抗菌薬の内服で順調に治癒するが,合併症のあるハイリスク例では治療が奏効しないことがある.


B.緊急性の判断と最優先の処置

1全身状態としての緊急性を判断 大半は全身状態良好で発熱を伴わない.逆に発熱や悪寒,頻脈,頻呼吸,舌乾燥(いずれも脱水症,炎症の進行を意味する)といった異常が一つでも確認できれば,すでに帰宅・外来治療では危険と考える.

2腎盂腎炎をまず除外 緊急性の高い疾患はまず腎盂腎炎である.通常,発熱悪寒を伴うが,ときには最初の主訴(診察前情報)が,腰痛,背部痛(片側,両側)だけのことがあったり,腰痛の自覚すらはっきりしないことがある.骨,筋肉由来の腰痛症との思い込みが先行し,意外にも発熱や悪寒が見落とされていることもある.高齢,認知症,介護受益者に特にその傾向が強い.重症化や診断の遅れを回避するためには,腎盂腎炎の除外を意識した診察を行わねばならない.

3肋骨脊椎角(costo-vertebral angle)の叩打痛(CVA tenderness,knock pain)

①腎盂腎炎で典型的にみられる.軽い肩たたき程度の力で強い痛みが生じ,明らかに左右差がみられ診断に有力な手掛かりとなる.

②もしも肋骨脊椎角の叩打痛,発熱,脱水所見のいずれもが否定できれば,腎盂腎炎を仮診断から除外してよい.

4合併症からハイリスク例を区別 合併症を持たない(uncomplicated)尿路感染症ならば,通常数日のうちに抗

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