A.ER診療のポイント
●血尿の定義:赤血球の尿中への異常な排出(>3RBC/HPF).
●血尿で緊急性が問われることはまれである.例外はバイタルサインの変動を伴う場合,急性腎不全,多発外傷に伴う血尿である.
●わずか1ccの血液が1Lの尿に混入しただけで変色するものであり,出血量を肉眼的に推測することは不可能.逆に色の程度で焦る必要もなし.
●診断には糸球体性,非糸球体性,それぞれの特徴を知る必要がある.
●非外傷性では感染が25%,結石20%,診断つかず10%というデータあり.
●50歳以上の血尿では,悪性疾患のリスクが高い.勝負はいかにして専門医に診療をつなげるかにあると考えよ.
●最後に,ヘモグロビン尿,ミオグロビン尿や薬剤性といったred-pigmenturiaに惑わされない.
B.最初の処置
1バイタルサインの確認
トリアージ段階で注意するべきである.
①血尿で出血性ショック徴候を示すことはまれであるが,注意する.
②もっと注意すべきは,SIRS項目を満たす発熱・低体温.この場合は尿路感染敗血症を即座に考える.
③呼吸数上昇や酸素飽和度の低下を伴う場合は,急性腎不全に伴う肺水腫を考慮する.
④急性腎不全,高カリウム血症,徐脈・ショックというシナリオも忘れずに.これらを認める場合は高次ベッドでの即時緊急対応を.
2病歴
➊血尿をまずは3つのポイントで分類
①肉眼的か顕微鏡的か?肉眼的な場合は凝血塊を伴うか? 顕微鏡的血尿はここでは範疇外のため割愛する.凝血塊を伴う場合はほぼ,下部尿路つまり非糸球体性である.
②排尿時のどの段階で血尿を認めるか? 初期の場合は前部尿道(尿道炎,尿道狭窄など),終期の場合は後部尿道や膀胱,全血尿は膀胱,尿管や腎を考える.
③痛みを伴うか? 排尿時痛は感染・結石,側腹部痛の場合は結石や腎盂腎炎,恥骨部の違和感は膀胱炎を考慮する.逆に痛みのない場合,高齢者では悪性疾患を考え