A.ER診療のポイント
●排尿痛・排尿障害の患者を訴える患者を診た場合,随伴症状や全身症状を伴う排尿障害なのかどうかの判断が最も重要である.
●また,高齢者などでは他の主訴で来院されて詳細な病歴聴取をする過程で排尿障害が判明することがあるので,この患者に排尿障害はないのか,と積極的に聞き出す姿勢が大切である.
●尿閉の患者は「尿が出そうで出ない」「お腹が張ってつらい」といった訴えで来院されるので,原因を検索しつつ速やかに患者の苦痛を取り除くようにしたい.
B.最初の処置
1バイタルサインの確認と簡単な病歴聴取
①まずバイタルサインが安定しているかどうかの確認をする.排尿障害で見逃してはならない疾患は表1図のとおりである.具体的には,ショックの恐れはないか,特に起立性低血圧はないか,頻脈や徐脈になっていないか,発熱はないか,呼吸数は多くないか,酸素飽和度は低くなっていないか,などに注目する.
②病歴聴取では,排尿障害の特徴について聴取する.排尿時痛,頻尿,尿意切迫感といった刺激症状はあるか,排尿困難や尿線減少,尿閉といった閉塞症状はあるか,急性なのか慢性なのかといった症状の時間経過,血尿の有無,発症時の誘因,排尿障害前後の排尿習慣はどうか,1回の尿量,排尿の回数,尿意の有無,水分摂取量を聞く.また服用歴にも注意が必要である(表2図).
2身体診察
①身体診察では,意識障害の有無,チアノーゼ,貧血,下肢の浮腫などをみる.
②下腹部の視診・触診では,緊満した膀胱を下腹部正中の膨隆した硬い腫瘤として触れるかどうかを確認する.
③また外尿道口の視診では,排膿があるか,女性では膀胱脱,男性では精巣・精巣上体の腫脹・発赤がないか確認する.
④直腸診では前立腺の硬さや不整に注意.
⑤神経因性膀胱や神経疾患に伴う排尿障害を疑う場合は,積極的に神経学的所見をとる.脳神経障害の有無,四肢の運動や感覚障害の有無,深部腱反射