診療支援
治療

脳梗塞
cerebral infarction
永山正雄
(国際医療福祉大学教授・熱海病院神経内科)

A.疾患・病態の概要

●脳卒中は代表的な国民病であり死亡率,発症率は単一臓器疾患として最も高い.

●最も多い脳梗塞は,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症が各々約1/3を占める.近年,アテローム血栓性脳梗塞が増加している.

●脳塞栓症には,心房細動に伴う左房内血栓などによる心原性脳塞栓症と,頸動脈や大動脈弓から遊離した壁在血栓やアテロームなどに由来する動脈原性脳塞栓症がある(後者はアテローム血栓性脳梗塞に分類).

●血栓溶解薬である遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター〔rt-PA,アルテプラーゼ(アクチバシン®)〕投与例は脳梗塞の約2%に過ぎない.


B.最初の処置

 以下,「脳卒中治療ガイドライン2009」(事務局;筆者)を踏まえて概説する.

①Japan Coma Scale(JCS)で3桁の意識障害例や高度誤嚥合併例には,昏睡位(右側臥位),吐物除去,用手的気道確保,気管挿管,人工呼吸管理を適宜行う.

②必要に応じて適量酸素を投与する.低酸素血症が明らかでない場合,ルーチンに投与する必要はない.

③高血圧の処置は,高血圧性脳症,くも膜下出血が強く疑われる例以外は病型診断確定後に行う.また痛み,嘔気,膀胱充満による血圧上昇の可能性を検討する.

④明らかに脳浮腫や頭蓋内圧亢進が疑われる例では,高血糖,高浸透圧や心不全合併がなければ高張グリセリン(グリセオール®)(10%,1日400~800mL)を点滴静注する.高張グリセリンは脳卒中の急性期死亡を減らすが,長期予後や機能予後への効果は明らかでない.重症例では緊急避難的な過換気(PaCO225~35Torr),ベッド挙上やマンニトール(マンニットール®)投与が有効な場合があるが,マンニトールが脳血管障害急性期に有効とする明確な根拠はまだない.

⑤重症例や誤嚥例は禁食とし,症候安定後に栄養サポートチームの関与のもと,早期

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?