A.疾患・病態の概要
●脳実質に生じる出血である.高血圧性が大半を占める.慢性の高血圧により脳内の穿通枝に血管壊死,小脳動脈瘤が発生し,これが破綻して血腫をきたす.その他の原因として,脳動脈瘤,動静脈奇形,硬膜動静脈瘻,もやもや病,海綿状血管腫,静脈性血管腫,アミロイドアンギオパチーなどの血管病変,薬剤や疾病による血液凝固異常,脳腫瘍,出血性脳梗塞,外傷などがある.
●脳卒中の17.8%を占め,好発部位は,被殻(31.1%),視床(28.5%),皮質下(19.2%),脳幹(9.0%),小脳(8.3%),尾状核(1.4%)の順である(脳卒中データバンク).出血部位に一致した神経局在徴候を呈し,血腫が大きければ頭蓋内圧亢進症状,脳室内穿破をきたした場合は髄膜刺激症状を伴う.
●早期診断,止血の完成と再出血予防,血腫周辺帯(penumbra)の機能温存が診療の要である.発症3時間以内に38%の患者が33%以上の血腫量の増大をきたしたとの報告がある.患者は血圧の異常高値を呈していることが多いが,脳循環の自動調節能が障害されているため,過度の降圧は血腫周辺部の脳虚血を悪化させる.
B.最初の処置
①A(気道),B(呼吸),C(循環)およびD(神経学的所見)の評価を行う.舌根沈下,嘔吐,呼吸パターンの異常など,A,Bに問題があれば気道確保を行い,低酸素血症による二次的脳障害を回避した上で,早期に頭部CTを施行し脳内出血か否か診断を確定する.
②脳内出血と診断されれば血圧管理は必須となる.降圧目標は,①収縮期血圧180mmHg未満,②平均血圧130mmHg未満,③前値の20%の降圧,とされるが,収縮期血圧140~160mmHgまで降圧する施設も多い.脳動脈瘤や脳動静脈奇形,造影剤の血管外漏出や出血傾向のある患者にはさらに厳格に降圧する.降圧には,ニカルジピン(ペルジピン®),ジルチアゼム(ヘルベッサ
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