診療支援
治療

食道静脈瘤
esophageal varix
石川雅健
(東京女子医科大学八千代医療センター・救急科科長)

A.疾患・病態の概要

●食道静脈瘤破裂は致命的となりうる門脈圧亢進症の合併症である

●緊急治療は出血死の回避が第一目的となるが,門脈圧亢進症の約80%を占める肝硬変に対する対応も同時に必要であり,止血後の予後を左右する.


B.最初の処置

①吐血を主訴に受診した食道静脈瘤破裂症例に対してはまず,バイタルサインを把握し,ショック例では10L/分の高濃度酸素投与し,太い静脈路(18G以上)を確保し,温輸液を開始する.

②吐血が持続する場合は誤嚥を防ぐ意味から,気管挿管による気道確保を考慮する.

③静脈路確保時の採血により,血算,生化学検査(アルブミン,アンモニアほか肝機能,腎機能,電解質,凝固系検査,さらに血液型)を調べる.


C.病態の把握・診断の進め方

 一般に食道静脈瘤破裂は出血量が多く,色調は比較的鮮紅色である.肝硬変患者に特徴的な黄疸,腹壁静脈怒張,女性化乳房などを確認および過去の手術歴,輸血歴,アルコール大量摂取などの情報を問診から捉えられれば,食道静脈瘤破裂が強く疑われる.

1確定診断に近づくための観察・検査

1腹部超音波検査 腹部超音波検査により肝硬変の程度,脾腫の有無,腹水の有無およびその程度を確認する.

2緊急上部消化管内視鏡検査 出血性ショック対策(急速輸液,輸血,気管挿管による気道確保,酸素吸入など)が優先される.呼吸・循環動態が安定してからの検査では活動出血を捉える頻度は低く,破裂部位の診断には一時出血終止期の赤色栓,白色栓などの所見でなされる.大量出血で視野がとれない場合や全身状態が悪く内視鏡検査ができない場合にはS-Bチューブ(Sengstaken-Blakemore tube)による止血を行い,一時止血後12~24時間以内に再検する.「S-Bチューブ挿入留置」,


D.引き続き行う処置

 内視鏡専門医が不在あるいは全身状態が悪い場合を除き,S-Bチューブが用いられる頻度は限

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