診療支援
治療

消化管異物(成人)
gastrointestinal foreign body
平 泰彦
(聖マリアンナ医科大学教授・救急医学)

A.疾患・病態の概要

1消化管異物

 誤飲とは,本来嚥下されるべきでない物質が誤って咽頭から食道,胃,上部・下部消化管へ送られることである.誤飲した物質が消化管内で吸収されず消化管内にとどまる場合,これを消化管異物という.これに,大きな食物(特に肉)を嚥下し,食道に停滞する場合も消化管異物に加える.

2好発年齢

 成人より小児に多く,乳児(3歳以下)に好発し,異物はコインが多い.成人では,魚骨,食物塊,義歯,薬剤(PTP)などが多い.そのほか,高齢者,精神神経科患者,老人性認知症また自殺企図者などに多くみられ,常識外の異物をみることがある.食道の生理的狭窄部位に介在する.

3咽頭異物

 魚骨による口蓋扁桃や舌根部への刺入例が多い.

4食道異物

①消化管異物で臨床的に重要なのは,食道異物である.食道を通過した消化管異物の多くは下部消化管を障害なく通過して排泄される.

②食道異物は食道の生理学的狭窄部位に好発する.第1狭窄部(食道入口部),第2狭窄部(大動脈弓部,左主気管支交差部),第3狭窄部(食道裂孔)が好発部位である.

③生理的食道狭窄以外に,食道の病的状態として,腫瘍(食道原発腫瘍,気道系腫瘍による食道浸潤,圧迫),好酸球性食道炎,放射線食道狭窄,食道粘膜輪,憩室,食道潰瘍による狭窄などの既往があると食道異物を発症しやすい.

5食道損傷・破裂をすでにきたした症例

 救急初期治療の現場では,本症をまず念頭に置き,緊急の処置,手術を考慮する.緊急度のみならず食道破裂による縦隔洞炎は重症度も高い.その多くは手術治療により縦隔を開放・洗浄し,ドレナージチューブを挿入する.

6胃内異物

 食道を通過して胃内へ落ちた胃内異物による訴えは少ない.しかし,まれではあるが消化管穿孔をきたすので十分な観察は必要である.2週間は自然排泄を待つ.2週間を超えて胃内に停滞する異物や幽門輪を通過できない大きさの異物はファイバー

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?