診療支援
治療

急性虫垂炎
acute appendicitis
内田靖之
(帝京大学・救命救急センター)

A.疾患・病態の概要

●急性虫垂炎は緊急で手術が行われる急性腹症のなかで,最も頻度の高い疾患であり,10~20歳代で最も罹患率が高い.

●原因としては,リンパ濾胞の過形成や,糞石・異物などによる虫垂管腔の閉塞が一般的である.虫垂閉塞による内圧上昇によって粘液分泌が亢進し,細菌の増殖が引き起こされると考えられている.

●炎症が進行すると,浮腫,うっ血,虫垂壁の菲薄化が生じ,血流障害によってやがては壊死や穿孔を引き起こすこともある.

●病理学的には,炎症の程度により,①カタル性虫垂炎,②蜂窩織炎性(化膿性)虫垂炎,③壊疽性虫垂炎に分類される.


B.最初の処置

①腹痛患者を診察する場合,まずは緊急性の有無を判断するため,患者全体の外見を評価するとともに,バイタルサインの確認を行う必要がある.

②汎発性腹膜炎の患者は実際に具合が悪そうにみえ,膝を伸ばせず,抱えるような姿勢で横になっている傾向がある.敗血症患者では,ぐったりして傾眠傾向となっている場合もある.

③低血圧や頻脈は脱水による循環血液量減少の可能性がある.発熱や頻呼吸を伴う場合には全身性炎症反応症候群(SIRS)や敗血症に陥っている可能性を考える.

④急性虫垂炎の患者では,初診時よりこのような重篤な状態に陥っている頻度は少ないが,上記のような場合には,確定診断よりもABC(気道,呼吸,循環)の安定化を図るとともに,緊急手術を含めた迅速な対応が必要なため,外科医による診察を急がねばならない.ABCの安定が得られない状態のまま,いたずらに鑑別診断のための検査を進めることは厳に慎まなければならない.

⑤患者の状態が安定している場合には,詳細な病歴聴取を含めた注意深い診察が重要になってくる.


C.病態の把握・診断の進め方

 急性腹症の診察は,病歴と身体所見が重要である.画像検査や血液検査は確定診断に近づくため,あるいは治療方針の決定のために役に立つ.

 典

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?