診療支援
治療

憩室炎
diverticulitis
内田靖之
(帝京大学・救命救急センター)

A.疾患・病態の概要

●腸管壁の一部が嚢状に漿膜側に突出した状態を憩室(diverticulum)という.

●腸管壁の全層が突出したものを真性憩室,筋層が欠損するものを仮性憩室という.

●原因としては,腸管内圧の上昇が長期に繰り返された結果,腸管壁の弱い部分で粘膜がヘルニア状に突出するものと考えられている.仮性憩室が多く,部位としては結腸が最も多い.

●大腸憩室の頻度は40歳以下で10%以下であるが,年齢とともに頻度は上昇し,80歳以上では50%を超える.

●憩室症の多くは癌の検診などで無症候性に発見されても,治療の対象とはならないが,憩室炎や出血などの合併症を有する場合に診断と治療が必要となる.

●大腸憩室炎(colonic diverticulitis)は憩室への糞便の貯留や内圧上昇に伴って生じる炎症であり,初期には憩室壁のびらんが生じ,局所の壊死から最終的には穿孔をきたすと考えられている.

●大腸憩室炎は近年増加傾向にあり,その多くが限局的な感染にとどまる軽症から中等症である.しかしながら,時に膿瘍や瘻孔を形成したり,汎発性腹膜炎から敗血症性ショックをきたし,致死的な経過をとる場合もある.


B.最初の処置

①腹痛患者を診察する場合,まずは緊急性の有無を判断するため,患者全体の外見を評価するとともに,バイタルサインの確認を行う必要がある.

②汎発性腹膜炎の患者は実際に具合が悪そうにみえ,膝を伸ばせず,抱えるような姿勢で横になっている傾向がある.敗血症患者では,ぐったりして傾眠傾向となっている場合もある.

③低血圧や頻脈は脱水による循環血液量減少の可能性がある.発熱や頻呼吸を伴う場合には,全身性炎症反応症候群(SIRS)や敗血症に陥っている可能性を考える.

④上記①②③で緊急性が高いと判断した場合には,確定診断よりもABC(気道,呼吸,循環)の安定化を図ることが優先され,また,緊急手術を含めた迅

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