Ⅰ.急性胆嚢炎
A.疾患病態の概要
●急性胆嚢炎は,胆嚢に生じた急性の炎症性疾患で,多くは胆石に起因するが,胆嚢の血行障害,化学的な傷害,細菌,原虫,寄生虫などの感染,また膠原病,アレルギー反応など発症に関与する要因は多彩である.
●病理学・病態学的には,浮腫性胆嚢炎,壊疽性胆嚢炎,化膿性胆嚢炎などがあり,急性胆嚢炎に伴う合併症・併存病態として,胆嚢穿孔,胆汁性腹膜炎,胆嚢周囲膿瘍,気腫性胆嚢炎,胆嚢捻転症などがある.
B.最初の処置
急性胆嚢炎は心窩部や右季肋部痛で発症することが多く,これらを訴える場合には,問診,理学所見,血液生化学検査とともに,超音波検査を行う.
C.病態の把握・診断の進め方
1確定診断に近づくための観察・検査
診断基準(表1図)のように右季肋部痛などの腹部所見,炎症反応,特徴的な画像検査で診断できる.
D.引き続き行う処置
急性胆嚢炎と診断した後には,フローチャート(図1図)に沿って診療を行う.診断後は,重症度判定(表2図)を行い,重症度に応じた輸液,抗菌薬投与などの治療を行う(表3図).
1合併症と処置
急性胆嚢炎で重篤化することはまれではあるが,胆管炎合併例,高齢者や小児などでは慎重に対処する(表3注参照図).
2入院・帰宅の判断
急性胆嚢炎を疑えば,入院治療が必要である.特に超音波プローベを胆嚢に押し当てて行った際のMurphy徴候はsonographic Murphy徴候と呼ばれ,診断に有用である.
3専門医による治療の概略
①急性胆嚢炎では,原則として緊急~早期の胆嚢摘出術(腹腔鏡下の胆嚢摘出術が多く行われている)を前提とした初期治療(全身状態の改善)を行う.
②全身状態不良例では,緊急胆嚢ドレナージを行うこともある.
E.入院3日間のポイント
●急性胆嚢炎発症早期の手術は容易で合併症も少なく,入院期間も短い.
●急性胆嚢炎では,絶食,十分な輸液,電解質の補正,鎮痛薬,