診療支援
治療

急性肝炎
acute hepatitis
中村郁夫
(東京医科大学准教授・消化器内科)

A.疾患・病態の概要

●急性の肝機能障害を呈する肝疾患の病因(図1)は,大きくウイルス性と非ウイルス性に分けられる.ウイルス性には,A型・B型・C型・D型・E型肝炎ウイルス(HAV,HBV,HCV,HDV,HEV)のほか,EBウイルス(EBV),サイトメガロウイルス(CMV),単純ヘルペスウイルス(HSV)などによるものがある.非ウイルス性には,アルコール性,脂肪性〔非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)〕,薬物性,自己免疫性〔自己免疫性肝炎(AIH),原発性胆汁性肝硬変(PBC)〕などがある.

●急性肝炎とは,肝炎ウイルスの初感染で肝障害を生じ,黄疸などの症候を呈する疾患群である.HAV・HBV・HCVおよびHEVの急性感染がその原因である.また,EBV・CMV・HSVなど肝炎ウイルス以外のウイルス感染による急性肝障害も急性肝炎に加えるのが一般的であるが,自己免疫性肝炎,薬物性肝障害は除外する.

●急性肝炎の大部分は経過観察のみで自然に治癒する.ごく一部の症例が重症化し,肝性脳症を併発して劇症肝炎,遅発性肝不全(late onset hepatic failure:LOHF)へと至る.したがって,重症化するリスクのある症例を的確に診断し,肝壊死の進展を抑制するために肝障害の成因に応じた治療を実施することが重要である.

●劇症肝炎とは,ウイルスに対する生体の過剰な免疫応答が生じたため,急激かつ広範囲に肝細胞が壊死し,肝臓の予備能が著しく低下した状態であり,意識障害と肝不全を主徴とする.肝炎のうち,病状発現後8週間以内に,高度の肝機能障害によって肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症をきたし,プロトロンビン時間(PT)40%以下を示すものと定義される.


B.最初の処置

1病歴聴取

①まず,病歴を聴取することが第一歩である.急性肝炎に特異的な症状は少ないので,(他院の血液検査で肝機能障害を指摘された上で紹介

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