診療支援
治療

低血糖症
hypoglycemia
瀧野昌也
(長野救命医療専門学校・救急救命士学科長)

A.疾患・病態の概要

●脳がエネルギー基質としてただちに利用できるのはブドウ糖のみである.低血糖症は,血中ブドウ糖の減少によりカテコールアミン過剰症状と中枢神経系の機能障害をきたした状態であり,救急外来ではしばしば遭遇する.血糖値は50mg/dL以下のことが多い.

●原因としては,インスリンまたは経口血糖降下薬を使用中の糖尿病患者に発生する医原性のものが大部分を占める.低血糖は,糖尿病治療中にみられる頻度の高い重大な合併症である.

●症候は,反応性に分泌されるカテコールアミンによる顔面蒼白,冷汗,動悸,振戦などと,脳機能低下に由来する種々の神経症候や意識障害からなる.時に片麻痺で搬入され,脳卒中との鑑別が必要になる.

●多くの例ではブドウ糖の投与に反応して迅速に回復し,外来診療のみで帰宅できる.低血糖が遷延する時などは入院が必要である.重篤な低血糖が遷延した後には,不可逆的な脳障害を残すことがある.重篤な低血糖発作の反復は認知障害をきたす.


B.最初の処置

①ただちに血糖値を測定して診断を確定する.意識障害のある時は,静脈路を確保して50%ブドウ糖液40mLを静注する.小児では高浸透圧による血管障害を防ぐために,10~20%ブドウ糖液を使用し,ブドウ糖として0.5~1g/kgを投与する.いずれでも,引き続き10%のブドウ糖を含む輸液製剤を持続点滴する.頻回に血糖値を再検し,血糖値が100mg/dL以上に保たれるように輸液速度を調節する.再び低血糖に陥る場合には,ブドウ糖のボーラス投与を繰り返す.ブドウ糖の持続点滴は食事が可能になるまで続ける.静脈路が確保できないときはグルカゴン1mg(小児では0.5mg)を筋肉注射する.血糖値の改善後も意識障害が続くときは他の原因を検索する.

②意識がしっかりしていればジュース,コーヒー飲料,砂糖水などの血糖上昇効果の速い

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