A.疾患・病態の概要
●動脈血液ガス分析において,血液の酸性・アルカリ性を規定する因子は呼吸性と代謝性に分かれる.
●呼吸性因子は主として,気道や肺,中枢性の因子により規定される.
●代謝性因子はショックなどの全身の代謝状態や腎機能の問題などにより規定される.具体的には血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)と重炭酸イオン濃度(HCO3-)により規定される(図1図).この項では代謝性の因子について述べる.
●血液ガスの基準値は表1図の通りである.
●見た目の異常値を補正することも必要であるが,その背景にある原因を検索することがなお重要である.
B.最初の処置
①血液ガス分析は重症の救急患者には必ず行うべき検査である.
②穿刺部位をよく消毒し,ヘパリン加されたシリンジに22~23Gの針をつけ穿刺する.
③頻回の検査が必要な場合には動脈ラインを留置する.
C.病態の把握・診断の進め方
1アシデミア,アルカレミア
まず,pHが正常に比べ低ければ(<7.35)アシデミアである.高ければ(>7.45)アルカレミアである.pHが正常であっても,酸塩基平衡が正常であるとは限らないことに注意する.
2呼吸性,代謝性
呼吸性,代謝性の鑑別はPaCO2と,HCO3-の増減により判断する.
3代謝性アシドーシス(図2図)
1アニオンギャップ(陰イオンギャップ)(AG) 酸性になる原因となる酸があるかどうかを鑑別するために,陰イオンギャップを計算する.[Na+]-[Cl-]-[HCO3-]により計算される(図3図).
2乳酸,リン酸,ケトン体 臨床で頻度の高い異常酸はこの3つである.血液ガス分析装置によって乳酸が測定できる.ショック・循環不全や痙攣重積後には乳酸上昇を見ることが多い.腎不全によりリン酸の排泄が減少すると血清リン酸値が上昇する.ケトン体上昇(ケトアシドーシス)は糖尿病や飢餓,アルコール多飲により起こる.通常行われている
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