A.疾患・病態の概要
●見た目の異常値を補正することも必要であるが,その背景にある原因を検索することがなお重要である.
●主要な電解質として,ナトリウム(Na),カリウム(K),カルシウム(Ca)が挙げられ,それぞれの高値・低値が問題となる.他にマグネシウム(Mg)やリン(P)の異常もみられる.
●特に高カリウム血症は不整脈の危険が高く,生命に関わる緊急病態である.
●各電解質の基準値は表1図のとおりである.
B.最初の処置
①電解質検査は重症の救急患者では必ず行うべき検査である.
②Na・K・Caは血液ガス分析装置により同時に測定されることが多い.
C.病態の把握・診断の進め方
1低ナトリウム血症
1症候
①自覚症状としては,悪心,倦怠感,頭痛・記銘力低下などがある.身体所見としては,見当識障害,意識レベル低下,腱反射亢進,痙攣などがある.通常,血清ナトリウムが120mEq/L以下になると何らかの意識障害を呈すると言われているが,その絶対値よりその低下速度に左右される.長期にわたり,ゆっくり進行した低ナトリウム血症では,無症状のこともある.後述する原因により異なるが,体内水分量の変化によって皮膚所見や浮腫などの所見を認める.
②脳神経疾患の治療経過中に低ナトリウム血症を合併することは比較的頻度が高く,元々ある意識障害のために見逃されたり,脳疾患の増悪と見紛うことがあり,注意が必要である.
2鑑別へのアプローチ 低ナトリウム血症に限らず,電解質異常に対してどのような検査を行うかは,次の6ステップになる.
①真の低ナトリウム血症かどうか血漿浸透圧を測定する.
②尿中の濃度と排泄量を調べる.
③排泄率を計算する.
④バランスを計算し,イン・アウト・シフト(移動)の3因子の関与を明らかにする.
⑤体液状態(脱水の有無)を評価する.
⑥鑑別した原因が実際に存在するか否か検討する.
排泄率はナトリウムの尿中排泄量とナトリ
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