診療支援
治療

消毒法
disinfection
守谷 俊
(日本大学講師・救急医学系救急集中治療医学)
丹正勝久
(日本大学主任教授・救急医学系救急集中治療医学)

A.救急領域における消毒法とその特徴

●院内感染を考慮する上で消毒法は,最も基本的な手技の一つである.

●病原体あるいは対象となる器物により方法が多少異なるので基本原則が重要である.

●救急における消毒法で重要なことは,実践で使える知識と禁忌を整理しておくことである.

●救急処置時の消毒や手洗いにおける消毒に関する知識が重要である.

●消毒薬を選択するにおいては,対象とする微生物,対象物,消毒薬の濃度,作用時間,作用温度(低いと殺菌力低下)などを考慮した有効な使い方が求められる.

●本項で提示した消毒薬は,それぞれのカテゴリーの中心であってそれ以外についても参考にされたい(表12).


B.消毒法に関係する用語説明

1消毒 人畜に有害な微生物または目的の微生物のみ殺菌すること.滅菌のような無菌状態とは異なる.消毒範囲に該当しない微生物においては増殖している可能性がある.

2滅菌 完全な無菌状態にする行為そのもので,すべての微生物を殺すか除菌した状態にすること.

3殺菌 微生物を死滅させること.

4抗菌 微生物の増殖を阻止すること.

5静菌 微生物の増殖を薬剤がある時だけ阻止することを示す.臨床的には反復する複雑性膀胱炎に対する抗菌薬投与時に静菌作用を期待することがある.

6除菌 微生物を物理的に分別して取り除くことを示す.


C.消毒薬の注意点

①消毒薬選択にはその効力を把握しておく.

②消毒薬を正しく調整する.部屋や希釈水の温度,精製水調整,無菌的希釈などに注意する.

③血液などの有機物付着時は,あらかじめ洗浄を徹底する(血液の場合は,消毒薬の蛋白凝固作用により消毒薬が浸透しない).

④消毒薬の保管や管理に配慮する.特に,管理温度,火気厳禁,排水の規制あり.

⑤消毒薬の副作用・毒性に注意.特にガス発生,急性循環不全,皮膚炎,中枢神経作用など.


D.手術野を含む救急処置時の部位別の消毒

1健常正常皮膚

①0.5%ク

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